これは、相当年月が経っている証だ。ごみが何層にも、地層のように積み上がっている。時間が経てば経つほど、ごみの状態は劣化し臭いもキツくなる。固まっているということはそれが確定した証拠。
「雪崩ろよ……」と、全員も固まった。
そして、その層となったごみの中にちりばめられて挟まっている、ある物が目に入った。作業員全員が瞬時に理解し、ごみの山に背を向け天を仰ぐ。
そう、「尿ペ」だ。
尿ペが、たっぷりレーズンパンのレーズンくらいの割合でちりばめられている。これにはさすがに、冗談好きの社員も口をつぐんでいる。
しかし、もう蓋は開いてしまったのだ。やるしかない。
ごみの方に振り向き、屈伸を一つして作業開始。
弧を描いてほとばしる尿
頭の上まで積もっているごみを上から崩していく。
ベースは弁当がら。その中にエロ本、酒瓶、服、生ごみ、尿ペが定期的に出てくる。ごみ屋敷の総合商社となっていた。最強レベルのごみ屋敷だ。
底知れないごみ屋敷を前にひるんでいたが、こっちも完全防備で戦う準備はできている。全員がペースを上げる。
と、社員が尿ペを持ち上げた瞬間、日光で劣化したペットボトルの蓋が砕けた。
「あっ!!!」
ペースを上げていたのが仇となって、振り上げた手を止められない。そのままペットボトルに入っていた尿が飛び出し、弧を描いてその社員を包んだ。
全員が彼を見つめる。
野球漫画で敵にホームランを打たれた瞬間の、チームメイト全員の「あっ」顔のどアップのコマを想像してほしい。次の見開きページには、弧を描いた尿を浴びる社員の姿だ。
「大丈夫ですか?」と言う間もなく、防塵マスク越しでも鼻に突き刺さるとんでもない激臭。アンモニア臭に苦味を混ぜたような臭い。
頭から浴びた社員が慌てて防護服を脱ごうとしている。うちで使っている防護服は、防塵性は高いが、防水性はそこまでない。防護服の下は自前の服なので、染み込んだら終わりだ。
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