「ニューヨーク全体が山本に対して厳しい目を向けていた」
一方で、さる米大手マネジメント会社の代理人は山本がギアを上げざるを得なかった理由を、ヤンキースやメッツを巻き込んだ昨オフの山本争奪戦だと指摘する。
「山本のドジャース行きが決まった時、米球界では最初からドジャースに行くことを決めていたのに、資金力があるヤンキースやメッツにも色気を見せることでドジャースとの契約額をつり上げた強欲な人物ではないか、と非難が集まったんです」
メッツは大富豪のスティーブ・コーエン・オーナーが山本を自宅に招いて夕食を振る舞うなど最大限の誠意を尽くし、ヤンキースはドジャースを上回る年俸のオファーを出したと言われている。どちらも山本取りに本気だっただけに、当て馬にされたことへの反感も募ったという。
大谷翔平(ドジャース)はエンゼルス入りした際、ヤンキースとの面談さえ断ったことがある。一部の辛辣なファンやメディアは「大谷は名門球団への挑戦を避けた臆病者」と書き立てたが、ここへ来て山本と比べる形で「少なくとも大谷は条件闘争にヤンキースを利用しなかった」と再評価する声もある。
「山本サイドのやり方はニューヨークの2球団だけではなく、米球界関係者全体に顰蹙を買い、反感を高めました。山本が4月19日にメッツ戦に登板した時はホームのドジャースタジアムでしたが、ヤンキース戦は敵地ヤンキースタジアム。ニューヨーク全体が山本に対して厳しい目を向けていたようでした」
そして山本サイドは、その空気を察していたのではないかという。
「だからこそニューヨークでは力を見せつけなければいけませんでした。最高球速が2キロも上がり、故障につながった一因だったと思っています」
田中将大(現楽天)や大谷らがそうだったように、日本人投手にはメジャー1年目で肘を故障するというジンクスがある。1年目でなくてもダルビッシュ有(パドレス)や松坂大輔もトミー・ジョン手術に至った。ドジャースは山本との契約時に、肘を故障した場合はオプトアウトのタイミングを遅らせるなどリスクヘッジをしていたのだが……。
「肘の故障はまだ良いんですが、肩は構造が複雑なので治る見込みが立ちづらい。肩に大きなけがをして、完全復活したピッチャーはほとんどいません。由伸のけがが投手生命に関わるものにならなければいいのですが」(前出のNHK解説者)
故障した部位が部位だけに、既にレギュラーシーズン中の復帰さえ無理をさせないのではないかとの観測が出ている。力投の代償はあまりに大きかったようだ。