成長のモチーフとして初潮も描く
双子の女性監督ということもあり、ひとつのモチーフとして経血が登場するので、男性観客はドキッとするかもしれない。だが同じように成長しても、どこか大人びたミーの方が早く初潮がきている、というのは双子にとっておそらくとても印象深い事柄なのだ。
初潮は体つき以外にも心の発達とも密接に関わっている。途中、ユーは「どうしてミーの方がモテるんだろう」と不思議がる。
ティティヤーは同じ顔立ちと体つきなのに、ミーを演じる時は男の子が目で追ってしまうような、落ち着きをもった少女としての魅力を放つ。確かに同世代の男の子にとって、大人びたミーのほうが異性として意識させる、謎めいた雰囲気がある。
演出の粘りも相当なもの
それにしても双子がいる場面の演出がとても精緻だ。
ミーまたはユーとしてティティヤーの顔が映っているとき、横に顔が見えないダミーの少女を置いて、それを反対からも撮るのを繰り返したかと思うと、監督たちの演出の粘りも相当なものだ。
ぜひもう一度観て、映像の技術面も確認したい。
『ふたごのユーとミー』
INTRODUCTION
本作が長編映画デビューとなる監督、ワンウェーウ・ホンウィワットとウェーウワン・ホンウィワット。彼女らもまた、この物語の主人公たち同様の一卵性双生児の姉妹だ。
双子の監督ユニットが、双子を題材にした作品を扱うことは、長い映画史の中でも非常に稀有な例であると言える。
対して、主人公のユーとミーを演じるのは、新星ティティヤー・ジラポーンシン、ただひとり。演技経験ゼロから始めて、見事に一人二役を演じきった。
STORY
中学生のユーとミーは一卵性双生児の姉妹。生まれた時からどんなことでも一緒にシェアして、乗り越えてきた。絶対的信頼関係で結ばれたふたり。
しかし、色白でハーフの素敵な男の子、同級生のマークが彼女たちの前に現れると、今までとは違った時間が流れはじめる。シェアすることのできない“初恋”という感情に揺れるユーとミー。彼女たちの恋と成長の夏がくる。
STAFF & CAST
監督:ワンウェーウ & ウェーウワン・ホンウィワット/出演:ティティヤー・ジラポーンシン、アンソニー・ブイサレート/2023年/タイ/122分/配給:リアリーライクフィルムズ/6月28日公開