いま、タイの若手監督と、その作品を手掛けるレーベル“GDH”が熱い。『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(17年)など、世界の注目を集める映画を制作しており、本作もその一本となる。
また、この作品のプロデューサーはモキュメンタリー・ホラーの『女神の継承』(21年)のバンジョン・ピサンタナクーン監督。とはいっても今作はまったくホラーとは縁遠い内容だ。
祖母の元に身を寄せる中学生の双子姉妹
『ふたごのユーとミー』は、瑞々しい青春映画である。観終わって久々にクラクラしてしまうほど、可愛らしいまばゆさにあふれた作品だ。タイの田舎という、木々も風も湖もすべて、爽やかさで透徹している自然のなかに、双子の少女がやってくる。
時代は2000年問題に揺れる時期で、彼女たちはユーとミー。一卵性双生児でずっと仲良く暮らしてきた中学生の姉妹。違いはミーの頬に薄いほくろがあるくらいだ。
二人は食べ放題を一人分の料金で入れ替わって二人で楽しんだり、ユーの数学の再試を、得意科目であるミーがすり替わって受けたり、お互いの人生を分け合うように生きてきた。
しかし父の借金で両親が不仲となり、二人は祖母の元に身を寄せることになった。そこで一人の少年への初恋を巡って、初めて二人は心がすれ違うようになってしまう。
とにかくティティヤーの演技が素晴らしい
監督は双子姉妹のワンウェーウ&ウェーウワン・ホンウィワット。主演のユーとミーを一人二役で演じるのは、新人俳優ティティヤー・ジラポーンシン。彼女はピサンタナクーン監督が、知人のインスタで見かけて抜擢した期待の新星だ。
とにかくティティヤーの演技が素晴らしい。もちろん映画技術の、双子が同じ画面にいる違和感がない映像技術も発達しているが、ティティヤーは双子の微妙に異なる性格を、微細に演じ分けている。
ユーは健康的で明るく、ミーの方が心の成長が早く客観性を持っているように見える。
お互いに気遣いをしつつも、初恋を巡って初めてぎくしゃくする、双子の思春期の戸惑いがとても自然体なのだ。