遅きに失した“英断”
積水ハウスといえば、売上高は3兆円を超える業界2位のハウスメーカー。なぜこんな騒動になってしまったのか。同社の堀内容介副会長を直撃した。
――事業中止の経緯を。
「竣工前から会社宛てに(反対の)お手紙をたくさん頂いていた。SNSでも批判があり、あのマンションが建つことに納得されていない方がいるのはずっと知っていました。積水ハウスとしてこれは本当にいいのかと、自主的に判断したということです」
――最終決断は社長が?
「もちろん社長も私も(この件を)知っていますけど、事業の規模的に担当役員(の決裁事項)ですよ」
では、社長はどう答えるのか。仲井嘉浩社長を直撃すると、
「HPで開示している以上のことは申し上げられないので……」
と、何とも歯切れが悪い。
じつは仲井社長は6年前、積水ハウスが偽の地主にマンション用地代を支払った「地面師事件」を発端に当時の和田勇会長がクーデターで会社を追い出された際、52歳の若さで社長に担ぎ出された人物。そこで、こう聞いてみた。
――6年前の内紛から会社の意識が変わった?
「ガバナンス改革は当然、永遠の課題ですので、順次進めております、はい」
――そのことと今回の件は関係ある?
「いや、まったく関係ありません」
改めて同社の広報に尋ねると、
「マンション事業部を中心に事業が進みましたが、こと遠景で富士山を見たときの影響は十分に検討されていないことがわかりました。(社内で反対論が特に大きくなったのは)5月、6月。(強く反対したのは)主に法務部です。本社各部や役員も交え合議で決定しました。地域に影響を与える建物を残せないという判断、これに尽きます」
前出の長嶋氏が語る。
「今回は大きな会社だから中止にできたとも言えます。建設費や解体費に加え、民法上、売買契約を解除する際には売主が買主に手付金の倍額を支払う必要がある。土地の価値も相当下がるので、会社としては数十億円単位の損害となるでしょう」
遅きに失した“英断”。その代償は大きかった。
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