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「富士山が…」国立市マンション、異例の解体はなぜ? 「積水ハウス」社長&副会長を直撃!

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「確かに国立市の住民の方々は景観に対する意識が断トツに高く、住宅販売でも相当気を遣う。ですが用地取得も順調だと聞いていたし、建築許可も下りていたのに、まさかこのタイミングで取り壊しとは」

 積水ハウスのある営業幹部はこう驚く。

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「史上初ではないか」と語る異例の事態

 6月11日、積水ハウスが東京都国立市の分譲マンション「グランドメゾン国立富士見通り」の突然の事業中止を発表した。10階建てで総戸数18、販売価格は7000万円から8000万円台。すでにほぼ完成し、来月の引き渡しを待つだけだったが、「景観などについて検討が十分ではなかった」として解体するという。

解体のお知らせ

 不動産コンサルタントの長嶋修氏も「引き渡す間際に解体するのはマンション史上初ではないか」と語る異例の事態。問題となったのは富士山の眺望だ。

 問題のマンションは国立駅から南西に伸びる「富士見通り」沿いの約800メートルの地点にある。富士見通りは文字通り富士山の眺望で知られ、「撮影しに来るマニアも多い」(近隣住民)。国立市に在住歴のある詩人の故・草野心平も、富士見通りの風景を詩の一節に残している。

〈道路の真正面にまっぱだかの富士がガッと見える〉

 記者が実際に富士見通りから富士山の方向を見てみると、ちょうど問題のマンションが“まっぱだか”のはずの富士山を半分隠すように立ち塞がっていた。

問題のマンション

 だが、着工前に積水ハウスが開催した住民説明会の参加者はこう語る。

「眺望権についても議論になりましたが、積水の担当者は聞く耳を持たない感じでした」