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「ランナーは、クリエイターじゃなきゃダメだ。現状を疑え」。経営者も痺れた池井戸潤の最新長編

「ランナーは、クリエイターじゃなきゃダメだ。現状を疑え」。経営者も痺れた池井戸潤の最新長編

『俺たちの箱根駅伝』書評

2024/07/13

source : 文藝出版局

genre : エンタメ, 読書, 社会, 企業

note

 学生時代から陸上に打ちこみ、57歳にしてフルマラソンの自己記録を更新した(3時間7分17秒)フィットネスクラブ社長は、池井戸潤の最新長編『俺たちの箱根駅伝』をいかに読んだか――一気に上下巻を読了した直後の熱い気持ちをお届けします!

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「半沢直樹」や「花咲舞が黙ってない」などで有名な池井戸潤さんの『俺たちの箱根駅伝』。私の大好きな「箱根駅伝」を、ここまで、本質的な面白さを追求して表現した作品を知りません。『陸王』でも長距離ランナーの姿を上手く描いていましたが、今回の作品でのランナーの内面も含めた描写は圧巻でした。

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 ネタバレになるので多くは語りませんが、作品の序盤に「ランナーは、クリエイターじゃなきゃダメだ。現状を疑え。どうすればもっと良くなるか、(中略)常に考えて欲しい」という監督の言葉があります。このセリフで、チームがどう成長していくのか楽しみになり、あっという間に上下巻を読了しました。

 

 池井戸さんは、日本テレビの箱根駅伝担当者から「箱根駅伝完全中継への挑戦」の話を聞いて興味を持ち、箱根駅伝を実際に見て、取材を繰り返すなど、小説化に実に10年かけたそうです。今回の小説は、「寄せ集めの学生連合チーム」と「テレビ局」の2つの視点で同時進行型として物語が進んでいくのですが、それこそが池井戸作品の真骨頂でもあり、「渾身の作品」になっています。