文春オンライン
「ランナーは、クリエイターじゃなきゃダメだ。現状を疑え」。経営者も痺れた池井戸潤の最新長編

「ランナーは、クリエイターじゃなきゃダメだ。現状を疑え」。経営者も痺れた池井戸潤の最新長編

『俺たちの箱根駅伝』書評

2024/07/13

source : 文藝出版局

genre : エンタメ, 読書, 社会, 企業

note

「不可能」と言われた箱根山中生中継を実現した男

 小説の中で、実名の方が何名か出てきますが、その一人が私の師匠とも言える田中晃さん(WOWOW会長兼日本車いすバスケットボール連盟会長)です。小説の中で「天才ディレクターと呼ばれた田中晃」と表現されるほど、卓越したリーダーシップと熱意溢れる方です。私が田中さんに初めて会ったのは大学4年生の時で、田中さんと一緒にスポーツ中継に携わりたいという想いで日本テレビに入社しました。

 

「箱根駅伝」は元々、テレビ東京がスタートとゴール付近のみを生中継していましたが、「箱根駅伝」に魅了された坂田信久プロデューサーと田中さんが、日本テレビでの放送権を獲得し、当時の技術では「不可能」と言われた箱根山中での生中継を実現したのです。“全区間完全生中継”を成功させた1989年の箱根駅伝、大学4年生だった私は、田中さんの演出を後ろから見させて頂き、心が震えた事を、今回の小説が思い出させてくれました。

 それにしても、『俺たちの箱根駅伝』というタイトルも素晴らしい――小説の中で、寄せ集めの「学生連合チーム」が、練習や合宿を通して、それぞれの「箱根駅伝への想い」を再確認し、チームとして一丸になっていく様子は、痛快かつ感動的でした。ぜひ多くの方に読んで頂き、一緒に感想を語り合えたら素敵ですね!

 

岡部智洋(おかべ・ともみ)
アメリカ出身、現在58歳。株式会社ティップネス代表取締役社長。日本テレビ取締役。学生時代は短距離選手。日本テレビでは第80回箱根駅伝で総合演出を担当。「超時短トレーニング」をモットーにしている。https://www.tipness.co.jp/magazine/gymrun/

俺たちの箱根駅伝 上

俺たちの箱根駅伝 上

池井戸 潤

文藝春秋

2024年4月24日 発売

俺たちの箱根駅伝 下

俺たちの箱根駅伝 下

池井戸 潤

文藝春秋

2024年4月24日 発売

「ランナーは、クリエイターじゃなきゃダメだ。現状を疑え」。経営者も痺れた池井戸潤の最新長編

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文藝出版局をフォロー