7月10日、東京大学史料編纂所教授の本郷和人氏が、「文藝春秋 電子版」のオンライン番組シリーズ第9回「権門体制論とは何か?」に出演した(聞き手・高田なみ)。

 

権力を握っていたのは「天皇」か「将軍」か?

「権門体制論」は、日本の中世の政治権力のあり方を説明する大きな枠組み。

 天皇が日本の「王様」だとすると、その下に政治を司る「公家」(朝廷や貴族)、軍事・警察を司る「武家」(幕府や武士)、祈祷・宗教を司る「寺家」(お寺や僧侶)が束ねられ、相互に協力しながら、それぞれの仕事をしてきた、とする考え方だ。

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「今では学界の多くの人がこの『権門体制論』を前提に議論をしてしまっている。『それは違うぞ』と文句を言っているのは僕くらいしかいません」

 本郷氏はこう語った上で、「権門体制論」の問題点を次のように指摘する。

「歴史解釈に天皇という太い軸を立てることができるから、『権門体制論』はわかりやすい。けれど、それは静的な歴史解釈にすぎず、時代とともに変わっていった武家との関係性といった動的な視点が欠けているのです」

「蒙古襲来のときに外交・戦争を担ったのは、紛れもなく『幕府』でした。外交・戦争は国家権力を握った者にしかできない。この点で、当時の天皇が最高権力者だったと考えるのは難しい」

©文藝春秋

 そのほか番組の議論は、現在の日本史研究が抱える課題や、網野善彦史観と権門体制論の関係など、多岐に渡った。

「文藝春秋 電子版」では、60分におよぶ番組「本郷和人『日本史夜話』第9回 権門体制論とは何か?」のフル動画を配信している。