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依頼者と代理母は「対等」なのか

――一般的に代理母出産は、「富裕層による貧困女性の子宮の搾取」など負のイメージが想起されやすい生殖医療です。石原さんはご自身が代理母出産でお子さんを授かり、さらにビジネスとしても長年、代理母出産に携わっていらっしゃいますが、そうしたイメージについてはどうお考えですか?

石原 もちろん、アジアや東欧で行われているような、依頼者と代理母で圧倒的に経済格差がある間で行われる代理母出産には、決してきれいごとでは済まされない側面が現実的に存在することは承知しています。

石原さんご夫婦と娘さん

 私が住むアメリカのカリフォルニア州で行われる代理母出産についてお話ししますと、代理母になるには経済的に安定していることが大前提で、政府から経済的な援助を得ている方は代理母になることができません。また、代理母および同居家族に犯罪歴がないことも条件で、こういったことはエージェントのほうであらかじめ調べることができます。ほかにも喫煙や肥満などの問題を抱えている方はNGで、心身ともに健康であることや、一人以上自身の子どもを産み育てていることなどが条件として挙げられます。

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代理母になる条件

――カリフォルニア州では、経済的な事情から代理母になることはできないのですね。

石原 はい。そこはしっかり審査します。こうして候補にあがった複数の代理母と、依頼者の希望をもとに我々がマッチングさせていくのですが、一方で、代理母にも依頼母を選ぶ権利があります。代理母側は決して無条件で代理母を引き受けるわけではありません。

 なかには、代理母が「私は39歳以下の方の卵子を用いる場合のみ受け入れます」という条件を出してくることもあります。代理母も、できることなら一度で妊娠出産に至ることを望んでいます。40歳以上の方の卵子では妊娠がなかなか難しく、流産する可能性が高いと考えている方もいるんです。何度も流産した代理母は、のちのち代理母として選ばれにくくなるという背景も現実としてあります。

――過去には、代理母が産んだ子どもを、依頼者側に引き渡すことを拒否したケース(ベビーM事件)がニュージャージー州で起こっています。

石原 現在、アメリカで行われる代理母出産の多くが、子どもを授かるにあたって代理母の卵子を用いることはしておらず、依頼母の卵子を用いるか、それが難しければエッグドナーの卵子を依頼者側で用意することになっています。代理母の卵子を用いるとお腹の子に愛着がわいてしまい、依頼者への子どもの引き渡しを拒否する可能性もありうるため、それを避けるためです。なお、カリフォルニア州では、代理母出産においては依頼者側に親権があることが法律で明記されています。

代理母になる動機

――経済的な事情が背景にある方は代理母に立候補できないし、流産する可能性もあるなど常に身体的なリスクとも隣り合わせですが、代理母に立候補する女性の動機はどんなところにあるのでしょう?