文春オンライン

「星野リゾート トマム」を中国企業から408億円で買った“ナゾの社長”は何者なのか

note

「星野リゾートの件は話さないように言われている」

 まず、記者は件の複合ビルを訪れた。集合郵便受けには「YCH12」など複数の社名シールが無造作に貼付。8階では左右に整然と扉が並び、当該の部屋にはYCH〜ではなく、「大和キャピタル」との表札がある。ただ、インターフォンを押しても反応はない。

 ビル受付の女性に聞いた。

――あの部屋にあるはずのYCH16に連絡したい。

ADVERTISEMENT

「大和キャピタルという名前で契約されています。その他の名前では取り継ぐことはできません」

 調べると、この大和キャピタルもA氏が代表取締役の会社だった。民間調査会社によれば、彼は現在、50歳前後。監査法人や外資系投資会社勤務を経て、別の男性と2人で16年に経営コンサルなどを手掛ける大和を創業したという。状況を総合すると、A氏は大和をメインに、YCH〜を作っては閉じ、星野トマムのような投資案件に多数携わってきたようだ。

 A氏の自宅を訪ねたところ、男性が「星野リゾートの件は話さないように言われている」。YCH16は事実確認に対し、主に以下のように回答した。

「売主様及び関係者様との守秘義務の見地からご回答致しかねます」

星野トマム所有権の新たな事実

 では、星野トマムの所有権は、完全に日本企業の手に渡ったのだろうか。さらに調査を進めると、新たな事実が浮かび上がった。

 星野トマムの施設・土地を所有するのは、新雪の傘下企業とされる「株式会社星野リゾート・トマム」だ。その代表取締役は、上海豫園旅游商城の共同会長が兼ねていたが、売却合意の6月28日付で辞任。代わりに就任したのが、B氏である。彼は復星傘下の日本企業「イデラキャピタルマネジメント」で、資産管理部門の責任者を務める人物。これは、どういうことなのか?

 イデラに尋ねると、

「購入者からの要請に基づき、当社が管理業務を継続するため部門責任者であるBが代表となります」

 つまり、復星がYCH16に売却したはずが、蓋を開ければ、現在も同グループで星野トマムを管理し、関与し続けるというのだ。

星野リゾート本社の運営方針

 一方、星野リゾート本社に見解を求めたところ、

「運営会社である星野リゾートは、引き続き、運営内容も変わらず継続的に運営してまいります」

星野リゾートを率いる星野佳路代表

 中国色は消えないが、宿泊客が快適に過ごせるリゾートであり続けてほしい。

「星野リゾート トマム」を中国企業から408億円で買った“ナゾの社長”は何者なのか

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

週刊文春をフォロー