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「星野リゾート トマム」を中国企業から408億円で買った“ナゾの社長”は何者なのか

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 冬はスキー、夏は「雲海テラス」の絶景で知られる北海道屈指の人気ホテル群「星野リゾート トマム」(占冠(しむかつぷ)村)。ところが……。

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不動産バブル崩壊による資産の売却

 昨年秋の“中国マネーが買い漁る”シリーズ(電子版で配信中)でも取り上げたが、星野トマムを2015年に約183億円で買収したのが、中国の大手財閥「復星(フオースン)集団」だ。以来、復星が所有し、星野が実際の運営を担ってきた。

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雲海が美しい「星野リゾート トマム」のHP

「復星は上海市を拠点とし、基幹企業『復星国際』の売上高は4兆円に達する。欧州のホテルブランド『クラブメッド』を買収するなど世界中で事業を展開してきた。創業者の郭広昌会長は15年には突如失踪する騒動もありましたが、『中国のバフェット』と呼ばれる存在です」(北京特派員)

 ただ、最近は資産の売却を進めていた。

「中国では不動産バブルが崩壊。復星も22年には大幅減益に陥り、『非中核資産を整理する』と宣言していました」(同前)

 そして今回明らかになったのが、星野トマムの売却である。複雑なスキームだが、グループ企業「上海豫園旅游商城」の傘下で、都内の会社「新雪」を通じて星野トマムを所有。その新雪のほぼ全株式を「合同会社YCH16」に約408億円で売却することで、6月28日合意したという。

「インバウンドは絶好調ということもあり、売値は買値の2倍以上。単純に見ると、中国企業が日本で投資し、200億円以上の利益を得た形です」(同前)

YCH16とはどんな企業か

 では、星野トマムを買ったYCH16とは一体、どんな企業なのか。登記簿によれば、所在地は東京都港区。複合ビル8階の1室に、今年5月10日に設立されたばかりだ。目的欄には〈不動産の売買〉〈企業の合併・提携に関する指導・仲介及び斡旋〉などが記されている。

合同会社YCH16の法人登記簿

 しかも、同じ20平米にも満たないと見られる1室には「YCH1」から「YCH15」まで、数字を変えた15社が過去に所在していた。いずれも、企業との統合や解散、閉鎖を繰り返した形跡がある。例えば「YCH2」は18年にホテルチェーン関連の不動産会社などと合併し、翌19年に解散。「YCH6」は21年に老舗酒卸と合併し、同年に解散した。

 これらYCH1〜16の“社長”的な位置付けで登記されているのは、〈代表社員〉のA氏だ。謎めいた彼は何者なのだろうか?

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