「こんなことになるなら、もっといろいろ話しておけば…」
友人は言う。
「成人式の後には中学3年の時のクラスごとに飲み会をするのが慣例ですが、中学1年で引っ越した耀人は参加できるグループがなく、所在なく時間を持て余していました。気付いたらいつの間にか姿を消していた。……こんなことになるなら、成人式で会った時、もっといろいろ話しておけばよかったな」
そんな若山の家族が地元に残した痕跡もまた、やや不可解だ。父と母はパチンコ機器販売などの会社を経営していたが、会社登記に記載される代表取締役の住所は美濃加茂市内のまま。近隣住民らは「ずいぶん前に引っ越した」と証言しており、変更登記を怠る会社法違反状態となっている。父は、親族と共に同社の元請けにあたる会社の役員も務めていたが、昨年9月、親族と共に解任。元請け会社の社長は困惑しながらこう話す。
「引っ越した時にも何の連絡もなかった。一昨年の12月にいきなり『辞めたい』という趣旨のことを言ってきて、一応取締役会を経て解任に至ったんです。親族の方に至っては連絡も取れないし郵送物は返ってきてしまう状態。耀人君のことは覚えていますが、家族親族ともども、よく分からなくて私たちの頭はハテナでいっぱいですよ。お金の問題の有無については……答えられません」
今年3月、若山は渋谷の街頭で、姜と共にある動画配信者のインタビューに答えている。好きな言葉を尋ねられ、「お金。結局世の中はお金かな」と答えた。
20歳の若者らしく斜に構えただけか、あるいは夢破れた青年の偽らざる本心だったか。この翌月、若山は報酬金と引き換えに二度とヒーローの道には戻れない大罪を犯したのである。
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