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 役員報酬だけで毎年5000万円、6000万円という内部資料の証拠映像に加え、高級スポーツカーの映像。この2つの映像が雄弁に語っている。

 事件発覚後に「精神障害者の家族会」の関係者が初めて病院内に入ると廊下にエアコンがなく、シャワールームも狭いなど他では考えられない劣悪さに衝撃を受けたという場面があるが、患者の環境改善のための病院設備には費用をかけなかった。

 患者の死因についても院長が心筋梗塞や悪性リンパ腫などの病名をいとも軽い口調で語る音声も出てくる。何を重視して病院運営をしている人なのか伝わってくる構成だ。

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患者の診断名をめぐって釈明する朝倉院長の肉声(ETV「死亡退院 さらなる闇」より)

医療現場の「さらなる闇」

 病院スタッフの一人は朝倉院長について「(滝山病院では)不正請求はしていない。前の朝倉病院のときみたいに『やったことにしてお金を取っている』わけじゃないので……。(保険医の)取り消しはないので大丈夫と思ったみたい」とその胸の内を想像する。

 診療報酬の不正請求がないとしても、不必要な投薬などを意図的に繰り返して患者の命を危険にさらした疑惑があることは浮かび上がった。そのことで患者が次々に死亡した可能性があると専門医たちが指摘する。医師としてやってはならない行為ではないか。本来、監督官庁や捜査機関などが動くべき事案ではないのか。

 番組ではこうした「医療の内容」にまで行政が踏み込んで規制することは今の制度では極めて困難だと関係者のインタビューで示している。利益を得る目的で意図して「過剰医療」をやっていたとしても現状では取り締まることが難しい。「医療の判断」とされれば踏み込みにくい。これこそ番組のサブタイトルにある「さらなる闇」である。

 精神科の入院患者の9割以上が民間の病院にいる現状を考えると、民間病院がこうしてカネを得ていくことも私たちは容認しなければならないのだろうか。こうして患者たちの命や人権が犠牲になっていく。暴力や虐待の背景にあった患者をカネと見るような人権軽視の姿勢。こうした病院の実態を許していいものか。番組が突きつけている問いかけは重い。