レフトスタンド奥に立山連峰が雄大な姿を現していた。富山市民球場アルペンスタジアムで5月15日に行われたオリックス戦。千葉ロッテマリーンズ主催の公式戦地方開催は05年以来(16年の東京D開催は除く)だった。先発マウンドには地元・富山出身の石川歩投手が上がった。誰よりも大きな声援を受けながらのマウンドとなった。
「嬉しかったですが、ちょっと変な感じでしたね。地元はどちらかというとオフになって、戻るところという感じがあって、シーズン中に戻ってマウンドに上がるという感覚がちょっと掴めなかった。楽しかったですけど、気持ちの入れ方が難しかったのが事実です」
“凱旋登板”を意識して組まれていた先発ローテ
練習中もブルペンで投げている時もスタンドから地元出身の投手にいろいろなエールが飛び交っていた。球場には家族、後援会など多数の知り合いも駆け付けた。富山県魚津市の少年野球チーム「よつば野球少年スポーツ団」のメンバーと関係者の姿もあった。石川が小学校時代に在籍をしていた「本江野球少年スポーツ団」が他の3チームと統合。今年、新たに誕生したチームだった。その際、石川はユニフォームをプレゼント。子供たちは千葉ロッテマリーンズのピンストライプを元にデザインされたユニフォームを着ながらの観戦となった。
色々な人たちに見つめられながらのマウンド。「重圧は感じてはいなかった」と本人は否定するが、やはりどこかいつもの飄々とした背番号「12」ではなかった。6回を投げて被安打6、5失点。凱旋白星は叶わなかった。
ちなみにアルペンスタジアムを高校野球の富山大会で使えるのは準決勝から。石川の高校3年夏は三回戦敗退。だから高校時代にこのマウンドに上がった事はない。開会式で中に入ったことがあるぐらいだった。一方でプロに入ってからは球場に毎年、訪れている。去年12月もオフ恒例となっている地元の小学生を集めての野球教室を行い、すでに富山での公式戦開催が発表されていたことから子供たちと5月15日の試合での再会を誓っていた。
井口資仁監督もそんな石川の気持ちを汲んで開幕前にローテーションの順番を決めた。今季初先発は4月3日のオリックス戦(京セラD)。この日から毎週火曜日に先発をさせた。そうすれば5月15日の火曜日の試合に投げることが出来る。計算をしての事だった。「めったにあることではないからね。それをめちゃくちゃ意識してローテを組んだ」。指揮官はそう言って笑う。選手への親心だった。一度だけ試合が雨天中止となり水曜日に先発をしたが、それ以外は火曜日に投げ続け、この日を迎えた。