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忘れられないホームレス
俺たちは友達じゃない。空気のような存在だから、いちいち誰がどうとか覚えてないんだけど、1人だけ忘れられないホームレスがいる。
そいつが初めて地下通路に来たとき、患者衣っていうの?
病院で患者が着るやつ。あれを着てたんだよ。着の身着のままでさ。ああ、病院から抜け出してきたんだなっていうのが一発でわかった。
齢は俺と同じくらいだったかな。
何週間かいたんだけど、ある朝起きたら、そいつ死んでた。
俺も死ぬときはこんな感じかな
段ボールのすき間から体が見えるんだけど、ずーっと同じ体勢のまま動かないわけ。おかしいなと思って様子を見に行ったら、息してないのよ。
俺、前日までそいつと普通に炊き出しの話とかしてたから驚いちゃってさ。慌てておのちゃん(編注:横浜・関内のホームレスの先輩)と相談して、警察に行って対応してもらったんだけどね。
病院で死にたくなかったのかな?
本人の気持ちはわからないけどさ。
でもあいつの姿見て、俺も死ぬときはこんな感じかなって思った。こういう死に方もいいなって。