「章浩氏は役員報酬の一部を返上すると発表しましたが、一雅氏は返上していません。小林製薬は無借金で社債残高もない。現預金や有価証券が約1100億円あり、財務内容も良好です。逆に言えば、融資銀行からの圧力(デットガバナンス)が働かない。今後も、大株主、とりわけ一族の中心である一雅氏の影響力は強いままなのです」(同前)

閉鎖された大阪工場

創業家を脅かす「物言う株主」

 ただ、創業家を脅かす動きも顕在化している。香港の投資ファンド「オアシス・マネジメント」が7月22日時点で、小林製薬株を5.20%取得したことが明らかになったのだ。

「オアシスは物言う株主として有名で、22年にはフジテックの株主総会で創業家出身の内山高一社長(当時)の再任に反対し、最終的に内山氏は退任に追い込まれました。今回の保有目的は『ポートフォリオ投資および重要提案行為』としており、今後、オアシスによる創業家へのガバナンス圧力は高まることが予想されます」(同前)

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問題の“紅麹サプリ”

囁かれる「小林家によるMBO」

 そうした中、マーケットで囁かれているのが、小林家によるMBO(経営陣による自社買収)だ。

「創業家が株式の約3割を保有しており、オアシスと異なる外部のファンドと組んでMBOを仕掛けてくる可能性がある。MBOで非上場化すれば、株式市場からの圧力をかわせ、企業統治に影響力を行使しやすくなります」(証券会社幹部)

 小林製薬にMBOについて見解を求めたところ、

「小林一雅元代表取締役会長を含め、第三者による弊社買収の可能性について、弊社からのご回答はいたしかねます」

 売上へのダメージは避けられそうになく、損害賠償を巡る訴訟も生じる。株も役員報酬も「あったらいいな」で逃げ切りを目論む“猛毒会長”だが、まだまだ事態は収束しそうにない。