能町みね子さんがネットを巡回して拾い上げた言葉に独自の論考をねっとり加えた「週刊文春」の人気コラム「言葉尻とらえ隊」。この連載の約2年半分をまとめた文庫オリジナルの新刊『正直申し上げて』から一部を抜粋し、紹介する。(全3回の2回目)

能町みね子さんの新刊『正直申し上げて』(カバーイラストレーション:冬野梅子)

 ネットメディア「弁護士ドットコムニュース」は、ジャーナリストの江川紹子がX(旧ツイッター)で「スポーツ紙のコタツ記事は、なんとかならないか」と書いたことについて言及し、「ジャーナリストの江川紹子さんが、いわゆる『コタツ記事』を量産するスポーツ紙に痛烈な皮肉をぶつけた」というコタツ記事を発表した。

――これは、コタツ記事批判を元にして、スポーツ紙への皮肉として書かれたコタツ記事をさらにコタツ記事にしたものである。ああ、非常に読みづらい。

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 おふざけは置いといて、改めて「コタツ記事」を説明すると、取材を一切せず、コタツに入ったまま書けるような記事を揶揄する言葉です。特に、ネットニュースで、有名人の発言やSNSの文を勝手に抜き出して構成し、分析も批判も一切加えず「〇〇さんがこう言ってました」というだけの内容のものを呼ぶことが多いと思われます。

 ちなみに江川紹子が例として上げたウェブ版中日スポーツの「江川紹子さん、羽生結弦さん離婚発表の『モヤモヤ3つ』を考察『苦しめているのは、誰のどういう行為なのか』」という記事を調べてみると、本文691文字中、江川氏のブログからの転載部分が488字。実に約70%が丸写しで、中日スポーツ独自の見解は皆無。これで原稿料も払われず、時には勝手に刺激的なタイトルをつけられ、批判だけは書いた人にいくのだ。不条理だ。

 中日スポーツは、「〇〇さんが△日に自身のX(旧ツイッター)を更新」という定型文でコタツ記事を量産しています。私はこのフレーズで試しに今年(2023年)9月以降の記事を検索し、「最近、中スポにコタツ記事を作られている人ベスト5」を調べてみました。