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町内会のシルバークラブを手始めにカラオケやら踊りやらさまざまなサークルを体験するうち、読書会を発足させようとしている人との出会いがあった。せっかくだからと参加してみたら、これが面白いのなんのって。「もー最高なんだワ」と言い言い休まず通い続けて月日が流れ、八十の坂を越えちょいちょい入院するようになっても医師に手を合わせるようにして外出許可を勝ち取り参加するのだが、このときはもう「『読む会(読書会のこと)』はお母さんの生きがい」と家族も呑み込んでいたので、本人と一緒になって医師に頭を下げた。
わたしは「『読む会』はお母さんの生きがい」であることは知っていたが、実際にそこで何がおこなわれているのかは知らなかった。だから、なぜそんなにも母が「読む会」に行きたがるのか、つまり、なぜ「読む会」が母の生きがいとなりえたのか分からなかった。老母を思う子の心情として、生きがいがあってよかったなぁ、と思うきりだった。
ところが、入院中の母を見舞ってくれた「読む会」メンバーとのいかにも楽しそうなやりとりを見て、「あ」と思った。
母の灰色がかった黒目がキラキラと輝いていたのである。それは「母」や「妻」といった、もうすっかり身に染み付いているはずの肩書きが吹っ飛んじゃったみたいな、わたしの母というより、京子という人の目の輝きであるように感じた。