市場が下落すると、メディアはすぐに災害モードに突入する。そして私たちは「ウォール街の大虐殺」「市場の暗黒の一日」「あなたのお金を守る3つの投資法」といった記事をこれでもかというほど見せられる。
作家で投資家のジョシュ・ブラウンは、25年近いキャリアのなかで市場の有為転変を何度も経験してきた。そんなブラウンは投資家にこうアドバイスする。スマホのニュースアプリの通知を今すぐ、すべて、オフにせよ
「ニュースアプリはあなたをスマホのホーム画面から自分たちの世界に引きずり込むように設計されている。広告を見せ、あなたの行動を測定するためだ」とブラウンは書いている。
「あなたが注意すべきはニュースではなく、あなたを人生から引っぺがし、彼らの術数に引きずり込もうとするトラップだ。通知をオフにしよう」
そんなことをしたら運用のパフォーマンスが落ちるのではないかと不安を感じた人こそ、一番スマホと距離を置くべきだとブラウンは言い添えている。
「速報ニュースに基づいて頻繁に株の売買を繰り返し、利益を上げている投資家はいない。ゼロだ。一人もいない。そんな方法で儲かるはずがない。必ず損をする。まだこの事実を知らない人も、いずれ自分の運用成績を振り返り、自分がピエロだったことに気づくはずだ」
一番たちが悪いのは「後付の解説記事」
こうした観点に立つと、一番たちが悪いと僕が思うのは、特定の会社の株が上がった、あるいは下がった理由を説明する記事だ。
こうした記事には「今日、バンク・オブ・アメリカの株が下落した理由とは」、あるいは「ネットフリックス株が暴落した3つの理由」といった見出しがつく。
読んでいると、書き手にはこうした下落が起こることはわかっていた、そんな人物がわざわざ労をとって私たちに理由を説明してくれるのは奇跡のように有難いことだという気がしてくる。こうして株の下落を予測することは可能だという認識が一段と強まる。
だが実際には、記事の筆者たちは株がどうなるかなど、まるでわかっていない。後づけで下落の理由を説明し、投資家からクリック数を稼ごうとしているだけだ。