多くのメディアが投資の予測をするが、果たしてそれらは本当に価値があるものなのか…。ここではメディアが投資家たちに隠したい「不都合な真実」について解説。
世界各国でベストセラーになった金融ジャーナリストのニコラ・ベルベ氏の新刊『年1時間で億になる投資の正解』(新潮社/土方奈美訳)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)
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ニュースメディアの「予測」は信じる価値があるのか?
ニュースメディアがまき散らす悪影響のなかでも、とりわけ有害なものの一つが「予測」だ。
市場に関する予測は、私たちが呼吸する空気にちょっと似ている。存在を意識することすらない。新聞紙上では専門家が「相場上昇のペースは速すぎ、値上がり幅も行きすぎだ」と警鐘を鳴らし、下落を覚悟すべきだと説く。テレビニュースではコラムニストが特定の産業あるいは企業の業績は「確実に」良くなる、それを踏まえて投資せよと語る。
こうした行為を彼ら自身がどう定義するかはわからないが、実態はシンプルだ。未来がどうなるかを伝えようとしている、つまり予測あるいは予想である。
近い将来、市場がどう動くかがわかるなら、僕ならそれをテレビでしゃべったりするような無駄なまねはしない。有り金すべてをはたいて自分のリターンを最大化する。まあ、考え方は人それぞれだが。
ベンジャミン・グレアムはよく言っていた。ちまたに市場の先行きに関する予測があふれているのは、未来を読む特別な才能に恵まれた人が増えたためではない、未来に何が起こるかを知りたくてたまらない投資家が何百万人もいるからだ、と。
「株に投資しようと思っている人はほぼ全員、市場がどう動くかを誰かに教えてもらいたいと思っている。需要があれば、供給されるのは当然だ」
グレアムは同時代の専門家らの予測を評価していなかった。だがそれは何十年も前の話だ。その頃と比べれば予測の精度は高まったのではないか、と思う人もいるだろう。これほど高度なテクノロジーやデータが使えるようになったのだから、予測モデルは洗練されたのではないか、と。
残念ながら、未来の不透明感は相変わらずだ。
たとえば数年前、バンガード社は分析レポートにこう書いた。「今後数年間のパフォーマンスは良くても控えめ、というのが私たちの予測だ。今後5年間、高い市場リターンは見込み薄である」
この予測から3年後、S&P500は70%以上上昇していた。
残念!