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日大アメフト部の悪質タックルは、東芝の「チャレンジ」と同じ構造だ

こうして日本型組織は「集団催眠」にかかってゆく

2018/05/19

利益を水増しして「会社に貢献した」と達成感

 まったく同じシーンに出会ったことがある。東芝の粉飾決算を取材していた2015年、私は都内の某所で東芝の原子力事業部門で働く現役の部長に会っていた。彼は匿名を条件に自分たちの部署でも決算を改竄し、利益を水増しした手法を明かした後、驚くべき発言をした。

「上に言われて利益を水増しした書類を提出したのですが、その時は罪悪感を感じませんでした」

 ではどんな気持ちだったのか。

「むしろ、自分の部を守った、会社に貢献した、という達成感を感じていました」

 悪質タックルを見舞ってベンチの戻った選手がヘルメットを撫でられたのと同じように、粉飾決算に手を染めた東芝のエリートサラリーマンたちも「グッジョブ!」と褒められたのだろうか。だとしたら、すべてが狂っている。

東芝の子会社だったウエスチングハウスが手がけた米・ボーグル原子力発電所 ©共同通信社

言い訳の仕方も東芝に酷似している

 冒頭の回答の中で、負傷した選手に対する謝罪を求めた関学大に対して、日大側はこのように釈明していた。

「ルールに基づいた『厳しさ』を求めたが、指導者の指導と選手の受け取り方に乖離が起きていた」

「『あれぐらいやっていかないと勝てない。やらせている私の責任』(日刊スポーツ)という試合後の内田監督のコメントは、選手に『厳しさ』を求めて発したもの。反則行為を容認する発言と受け取られかねないものであり、本意ではないため撤回する」

 言い訳の仕方も「チャレンジ」と称して社員に粉飾をけしかけたとされる東芝の経営陣とよく似ている。東芝は粉飾決算(東芝は「不正会計」と表現している)で被った損害の賠償を求めて西田厚聰、佐々木則夫、田中久雄の歴代3社長(西田氏は死去)と2人の財務担当役員を訴えている。この裁判の中で佐々木氏はこう主張している。

「社長月例(社長と事業部責任者の会合)において『チャレンジ』と称される目標の伝達が行われる場合もあった。その意味合いはコーポレートからカンパニーに対する努力目標であり、その必達が要求されるものではなかった」

粉飾発覚時に社長の座にあった田中久雄氏 ©getty

 田中氏も「チャレンジは『もっと頑張れ』という社長からの叱咤激励であり、経営者として当然の行為。それをしないのは経営者の怠慢」という旨の発言をしている。「『厳しくやれ』とは言ったが『相手に怪我をさせろ』とは言っていない」という日大の主張と酷似しているではないか。

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