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作り手にとって「唯一想定外だった出来事」とは

 映画は完成し、ついにアクアはカミキと対峙することになるのだが、ルビーの命を狙おうとするカミキから妹を守るため、アクアは自分の胸をナイフで刺してカミキといっしょに海に落ちることで、彼を殺人犯に仕立てあげる。これこそがアクアの復讐だった。

 ファンの凶行によってアイ(アイドル)という虚構(嘘)を奪われたアクアが、映画という虚構の力でアイの名誉を取り戻し、ルビーがアイドルとして大きく羽ばたく物語として『推しの子』は幕を閉じた。

アクアとルビーの「この目」が印象的 公式YouTubeより

 アクアが自死を選んだ展開には批判が多く、最終回を前にSNSは炎上しているのだが、この炎上はアクアたち虚構のキャラクターを、現実のアイドルのようにファンたちが愛していたことを逆説的に証明しているように見えた。

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 アクアたちの恋愛模様を読者は熱狂的に見守り、全員に幸せになってほしいと思っていた。始まりから終わりまでコントロールが行き届いた作品だったが、この炎上だけは、作り手にとっては想定外の出来事だったのかもしれない。