日本製鉄の橋本英二会長兼CEO(68)が「週刊文春」の取材に応じ、米鉄鋼大手USスチール買収が認められない場合、アメリカ政府への訴訟提起も視野に入れている旨を明かした。大統領選に勝利したドナルド・トランプ氏(78)はこれまで買収に否定的な見解を示してきただけに、橋本氏の発言は大きな注目を集めそうだ。
買収総額2兆円の「社運を賭けたディール」
橋本氏は一橋大商学部を卒業後、1979年に新日本製鐵(当時)に入社した。常務、副社長などを経て2019年に社長に就任。国内高炉の廃止やリストラに踏み切るなどして、4期連続赤字だった国内製鉄事業を就任3年でV字回復させた。2024年4月に会長兼CEOに就任。財界活動にも力を注いでおり、現在は経団連副会長(2021年から)。次期会長の“本命”と見られている。
「その橋本氏が社長時代に主導し、2023年12月に発表したのが、米鉄鋼大手USスチールの買収でした。買収総額は約141億ドル(約2兆円)。『社運を賭けたディール』と呼ばれていました」(日本製鉄関係者)
トランプ氏もバイデン氏も反対していた
ところが、USW(全米鉄鋼労働組合)が買収に反発すると、大統領選に出馬意欲を見せていたトランプ氏が今年1月、「私なら即座にディールを阻止する」などと発言。さらに、ジョー・バイデン大統領(81)も買収に反対する意向を示すなど、政治に翻弄されていく。
「日本製鉄にとって難しい状況でしたが、組合側と対話を重ねてきた。安全保障上のリスクを審査する対米外国投資委員会(CFIUS)も審査期限を2回延長し、最終的な審査終了は大統領選後まで持ち越されました」(同前)
「何が何でもやり抜くつもりだよ」
果たして、橋本氏はUSスチール買収を実現させることができるのか。11月10日、本人を直撃した。
——米大統領選の結果を受けて。
「当社のUSスチールの買収案件は日本企業にとっても大事な話だし、アメリカにとっても良い話だから。しかも正式な手続きに則ってやってるんで。これ、1年間戦ってきたわけだ。こういう政治圧力に負けないように、色んなことやりながらね。何が何でもやり抜くつもりだよ」
——買収は橋本さんの悲願?
「当たり前ですよ。だからもし、これがね、正当な理由もなく、正式な手続きも経ないまま駄目になるってことであれば、当然我々は訴訟も考えますよ。アメリカ政府に対して」
現在配信中の「週刊文春 電子版」では、橋本氏との一問一答の完全版を掲載。USスチール買収を巡って、「メディアが書かない本当の対立構図」や「トランプ氏が買収に言及しなくなった理由」などについても激白している。
また、11月13日(水)配信の「週刊文春 電子版」および11月14日(木)発売の「週刊文春」では、トランプ氏勝利が日本企業に与える影響などについても取り上げている。
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