にしおかすみこさんが認知症&糖尿病の母、ダウン症の姉、酔っぱらいの父との暮らしを書いた『ポンコツ一家』は、大反響を呼び、web連載から書籍化。続編『ポンコツ一家2年目』も先日発売された。
しかし、家族の病気を赤裸々に発信することについては迷いもあるという。
第3回は、“家族を晒すも守るも私だ”という決意の真意、そして、ご家族と自分の今後についてお話を伺った。
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──“家族を晒すも守るも私だ”という言葉が印象的でした。ご家族のかたちを発表するのは難しいと思うのですが、ルールや線引きは決めているんでしょうか?
にしおか ちゃんとしたルールはないんですよね。1回1回「これはギリギリどっちだろう?」って悩んで、なるべくそのとき後悔しないようにと思いながら線引きしてます。何が正解かもわからなくて。
家族の個人情報だし、尊厳もあるじゃないですか。家族の残りの人生を生きづらくはしたくないけど、やっぱり綺麗事ではない部分もあるから。
「全国民に知られて、この先どうしたらいいんだ!」と最初は怒った母
──ご家族が『ポンコツ一家』の連載や本をご覧になることはありますか?
にしおか 連載の初回が出た夜に、たまたま父がネットニュースで見つけて、母にも伝わりました。私としては別に隠し事ではないし胸を張ってやってるお仕事だけど、わざわざ家族が知る必要はないんじゃないか。特に母は「そんなに娘に迷惑をかけているのか」と落ち込むかな……って気持ちがブレて、伝えていなかったんですよね。
――どんな反応だったのでしょう?
にしおか 母は最初「全国民に知られて、この先どうしたらいいんだ!」って怒っていました。私の文章にそんな影響力ないですけど(笑)。少し時間が経ってから「みんなから愛されるような文章になるといいね」と言ってました。母はもともと私を応援してくれるタイプなんですけど、父まで「役に立つようなことが書けるといいね」と言うようになって、これはちょっと“出来すぎ”だなと……。
――いつものお父様らしくないと。
にしおか 多分なんですけど、父はその発言も書かれると思って、好感度が高いことを言ったんだと踏んでいます(笑)。ただ、家にいるときのことを「あれ書かれるかな、これ書かれるかな」って思いながら過ごすのって普通は嫌なことだと思うので、背中を押してもらえたのはやっぱり感謝です。