――そういう幼少期のトラウマとはどのように付き合っていますか。
遠野 寝る前にお酒を飲んだり、睡眠薬を飲んだり、どっちかですね。あまり良くないんですけど、やっぱりお酒には頼ってしまいます。でも今通っている病院の先生は事情をわかってくださっているので、無理にやめてくださいということもなく「ゆっくり計画を立てて、付き合っていきましょう」と仰ってくださっています。
なんか、私の心には穴があるんですって。母のことや幼少期のことで空いてしまった穴を、男性だったり、アルコールで埋めようとしているらしいんです。「依存」と自分の口からは言いたくないですけれど、でも本当にその通りだなと思います。
15歳で摂食障害になった“きっかけ”
――遠野さんは15歳で摂食障害になられたそうですが、その経緯について教えてください。
遠野 それくらいの年頃って、ちょっと体型がふっくらするじゃないですか。今思えば健康的な体型だったんですけど、自分で悩んでいた時期に、母から「吐けば太らないのよ」と教えられて。当時は摂食障害なんて言葉も知らないし、そんな方法があるなんて思っていなくて。
吐きやすい食材はこういうもので、指を突っ込んでトイレで吐きなさい、と教えられて吐いたのが最初のことでした。
ガリガリになり、母からは「色気がない」と…
――初めて吐いたとき、どのような気持ちでしたか。
遠野 「いいことを教えてくれた」と思ってしまいました。摂食障害の方って、1回目はそうだと思います。吐いちゃえば、食べたものが魔法みたいにゼロになるんだと思ってしまうし、子どもでしたから、それがいいことなのか悪いことなのかも判断ができなかったんです。
何より、母がそんな体に悪いことを教えてくれるわけがない、と思っていたんでしょうね。今思えば、彼女は本当に鬼ですよ。
――遠野さんが食べ吐きを続けるなかで、お母さんはどのような反応をされていたんですか。
遠野 体型がガリガリになっていったんですが、それはそれで「少年みたいな体だ」「色気がない」なんて言ってきたりして。何をどうしても、私を認めてくれないといいますか。自分の「物」としか思っていなかったんだろうなと思います。
撮影=佐藤亘/文藝春秋
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