人間の生活圏内に出没したクマ、あるいは人間に危害を及ぼしたクマに対してとるべき対応は「駆除一択」である。よく「麻酔銃で眠らせればいい」という意見を聞くが、麻酔銃一発でクマを眠らせるのは実際には至難の業であり、下手に撃てばかえってクマは暴れ回る。仮にうまく麻酔で眠らせることができて、山奥に運んで放獣したとしても、そうしたクマは再び戻ってくる可能性が高い。その意味でも佐竹知事の毅然としたスタンスにはクマ問題を取材する一人として個人的に共感を覚えていた。
秋田市内のスーパーにクマが立てこもる事件が
そうしたところ、2024年11月30日、秋田市内の土崎港で開店前のスーパーに現れた1頭のツキノワグマが開店準備をしていた男性店員を襲ったあと、そのままスーパーに立てこもる事件が起きた(*被害者は顔などをひっかかれる軽傷)。結局、事件発生から2日後、クマは出入り口付近に設置された箱ワナにかかり、駆除されるに至った。
案の定、秋田市および秋田県庁などにはあわせて約200件(*抗議や応援などを含む)の電話が殺到したという。
そこでこの事件を受けて、佐竹知事に改めて「ガチャン」発言の真意とクマ対策のあり方について話を聞いたのが以下のインタビューである(*このインタビューは2024年12月12日に秋田県庁で行われたものです)。
佐竹北家の21代目当主
窓の外では、時折、地吹雪が舞っていた。
「やぁ、どうもどうも」。予定時間より早く秋田県庁内の一室に、佐竹敬久知事(77)が入ってきた。旧華族の家柄である佐竹北家の21代目当主である佐竹氏は、東北大学工学部を卒業後、秋田県庁に入庁し、県職員として勤務。97年に退職後、秋田県知事選に立候補して敗れるが、2001年には秋田市長戦に出馬して当選。これを2期務めたあと、09年には再度知事選に挑み、リベンジを果たす。以降当選を重ね、今年で4期16年目となるが、来年4月に任期満了を迎えるにあたって、知事の座を退任することを表明している。