日本経済の中心地、東京・丸の内から“マル秘”財界情報をくわしくお伝えする『文藝春秋』の名物コラム「丸の内コンフィデンシャル」。最新号から、ダイジェストで紹介します。

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犬猿の仲は続く

 ヤマト運輸(長尾裕社長)が日本郵便(千田哲也社長)に対し、小型薄型荷物の配達委託を見直すと申し入れたことが明らかになった。両社の親会社のヤマトホールディングス(HD、長尾裕社長)と日本郵政グループ(増田寛也社長)は、2023年6月に小型荷物の配送などで提携することで基本合意。物流効率化を進めようとしたが、協業が白紙に戻る可能性が高まっている。

(左から)ヤマト運輸の長尾裕社長、日本郵政の増田寛也社長、日本郵便の衣川和秀社長(当時)。2023年6月、協業発表の記者会見には各社のトップが集結 ©時事通信社

 23年の提携・合意に基づきヤマトは「ネコポス」を順次終了、日本郵便の「クロネコゆうパケット」に切り替えるため、配送業務の移管を進めてきた。今年3月までに移管を完了する予定だったが……。

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「ヤマトの現場から『協業で配達にかかる日数が延びて顧客サービスが低下した』との声が上がってきた。その声に押されるように経営陣は一部協業見直しを求めた。日本郵便はそれに反発、提訴へと動いた」(物流業界関係者)

 背景にはヤマトの業績悪化がある。ヤマトHDは24年9月中間期の最終損益で、中間期として5年ぶりに赤字に転落した。ネット通販の伸びが鈍化し、人件費や物流コストなども増えたことで、日本郵便への委託料が重荷となったとみられる。

 ただ「今回の協業は最初から無理があった」(メガバンク幹部)と言われる。両社の接近は、トラック運転手の残業規制が強化される「物流2024年問題」を念頭に始まったが、

「そもそも両社は長年、犬猿の仲だった。はがきなどの信書の取り扱いを独占してきた日本郵便にヤマトが反発し、メール便を始めた経緯もある。今回の混乱は目に見えていた」(同前)《続きは「文藝春秋 電子版」でご覧ください》