政治の中心地、東京・霞が関から“マル秘”政界情報をくわしくお伝えする『文藝春秋』の名物コラム「霞が関コンフィデンシャル」。最新号から、ダイジェストで紹介します。

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官邸に漂う閉塞感

「変節」を繰り返しつつも、なんとか年を越えた石破政権。衆院選後に少数与党で迎えた最初のヤマ場の臨時国会もなんとか乗り越えた。しかし通常国会では、与野党ともに夏の参院選への意識がいや増すのは必至。見せ場を求める野党の攻勢は強まり、自民党内でも「石破が“顔”では選挙を戦えない」という声がじわり広がる。石破論法で「熟議」をうたう実態は、戦略なき妥協を繰り返す「真空内閣」(自民筋)。国政の停滞は続く。

 衆院過半数を持たぬ首相の言葉は実現可能性を欠き、空疎さがつきまとう。その上、万事評論家肌で政策の方向性も定まらない。結果、否応なしに首相官邸の存在感が低下する。

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石破茂首相 ©文藝春秋

 首席秘書官の槌道明宏氏(昭和60年、旧防衛庁)は防衛政策には精通しているものの、マクロ経済を含む経済や内政、外交といったテーマは門外漢に近い。古くから付き合いがある首相の精神安定剤にはなり得ても、必然的に各省庁からの「ご説明」や注文の機会は目減りする。

 各省出身の6人の秘書官のうち、リーダー格は共に平成5年入省の中島朗洋氏(旧大蔵省)と、熊木正人氏(旧厚生省)だ。中島氏は首相と犬猿の仲の麻生太郎氏が財務相当時に秘書官を務めた「麻生印」。首相秘書官起用が決まると、少なからぬ霞が関幹部は「なぜ中島氏なのか」と首をかしげた。一橋大卒で財政健全化に一家言持ち合わせる顔は、かつて与野党の「バラマキ合戦」を喝破した矢野康治元財務次官(昭和60年、旧大蔵省)ともダブりそうだが、矢野氏の熱血ぶりと対照的に、中島氏は英国仕込みのスマートさが身上だ。

「将来の厚労次官」と目される熊木氏も「役人として手堅い」(厚労省幹部)タイプで、槌道氏や財務省を横目に切り回す強烈な個性はない。衆院選大敗後は、降りかかってきた「103万円の壁」見直しに中島、熊木両氏とも忙殺される日々。臨時国会に備え、オタク気質の首相の答弁資料作りで「疲弊しきっている。ろくに寝ていない様子だった」(経済官庁幹部)と気遣う声も上がる。《続きは「文藝春秋 電子版」でお読みください》