“友達”という言葉
最終巻では、高校生活の思い出作りに映画制作に励む話、生徒会長に立候補し選挙戦に奮闘する優希の姿、そして高校を卒業し大人になったみんなの今の姿が描かれている。高校生活最後の輝きから現在地がゆるやかに繋がっていくような、まるでタイムカプセルを開けた時のようなむず痒さと、加えて冒頭で投げかけた「友達ってなんだろう」という問いへのアンサーが詰まっている一冊だった。
教室でも、社会でも、私たちはすぐに人をラベリングしてしまう。でも、そんなラベルを取っ払い“違う”相手と対峙するからこそ、自分が形成されていくことが他者と関わることの本質ではなかったか。
そして“友達”であることには、「友達だよね」と口に出して承認し合う必要もないのだ。今現在交流があろうとなかろうと、過去を振り返った時に共有できる、一瞬の輝きさえあれば、“友達”なのだ。歳を重ねるにつれて臆病になりがちな私たちに『佐々田は友達』という物語はこう語り掛け、光を与えてくれる。
これから先、友達という言葉に対してざらついた感情を抱いてしまう時、私はきっと佐々田や優希と同じように静かにあの一瞬に思いを馳せるだろう。そして、確かにそこにあった友達の存在を確認し、2人のようにどこか誇らしげにニヤッと笑うと思う。

