2月の1軍春季キャンプ最終日の夜、沖縄・恩納村の豚しゃぶ店で6人の若虎が“初めての杯”を交わしていた。秋山拓巳、梅野隆太郎、岩崎優、陽川尚将、岩貞祐太、原口文仁――。6人は、産声を上げた時から同じ速さで時計の針を進めてきた同世代だ。プロ入り後、初めて開かれた「同期会」だった。

 いつの時代、どの世界でも“横のつながり”にはライバル関係や、固い絆が生まれるものだろう。タイガースの「平成3年世代」も決して例外でない。厳しく激しいプロでの生存競争の中で、互いを強く意識しながらも、時に励まし合い、切磋琢磨してきた。

昨季、チーム最多の12勝を挙げた秋山 ©文藝春秋

 秋山、原口の2人は、他の大卒組より一足早くプロの世界に飛び込んだ高卒組。昨季、チーム最多の12勝を挙げ、一気に飛躍を遂げた秋山にとって、ともにプロで8年以上を過ごしてきた原口は特別な存在と言える。自身は高卒1年目に4勝をマークしたものの、以降はずっと伸び悩んだ。原口も強打の捕手として期待されながらも、故障などで、一時は育成契約も経験するなど、苦労してきた。

ADVERTISEMENT

 秋山は感慨深げに言う。「原口は同じ高卒ですし、お互い、しんどい思いをしてきたことも知っているので。いつか、2人で甲子園のお立ち台に上がるようなことがあれば、僕は泣いてしまうかもしれませんね」。ともにクビも覚悟した“戦友”は、聖地で肩を組む日を夢見ている。

6月1日の西武戦で今季初の4番に座った原口 ©文藝春秋

信頼を高め合った梅野との同世代バッテリー

 秋山の主戦捕手を務めるのは、梅野隆太郎だ。同世代バッテリーが信頼を高め合ったのが、甲子園球場で行われた5月24日のヤクルト戦。スコアレスで迎えた8回2死一、三塁の窮地で山田哲人を迎えた。1球目の直球が外角へ外れると、右腕がタイムを取り、梅野はマウンドへ走った。

「勝負なのか、曖昧なところもあったので。2人で話して“いくしかない”と。お互いの気持ちを整理して(秋山には)サイン通りこいと言いました」

 心は通い合った。秋山は、1度も首を振らず5球連続で直球を投げ込んで右飛に打ち取った。直後に2点の援護を受けて白星が転がり込んだ。「今年、アキは毎回、自分に勝ち負けが付くような投球で。負けていても、長いイニングを投げることも多かった。あいつに勝ちを付けたい思いは、本当に強かった。(山田と勝負して)正解だったと思うし、2人の自信になった試合」。「アキ」、「ウメ」と呼び合う2人が、力を合わせてつかみ取った価値の高い1勝になった。

正妻として秋山をリードする梅野 ©文藝春秋