サッカー日本代表が頑張っている。
下馬評は最悪だった。監督は交代し、選手の平均年齢も高く、運動能力も強豪国の選手たちと比べると見劣りする。それでも食い下がっている姿を見ていると、サッカーにもW杯にも興味のない筆者だが、思わず応援の声をあげてしまう。
サッカー日本代表の姿は、我らが中日ドラゴンズと重なる(ような気がする)。下馬評は最悪だったが、ベテランが想像以上に頑張って、粘り強く食らいついている。あとは福田永将や高橋周平が大迫勇也や乾貴士のように活躍をしてくれれば「奇跡」だって起こるかもしれない。
後半戦、セ・リーグ最下位でスタートしたドラゴンズは、DeNAに連勝して711日ぶり(!)の3位に浮上。しかし、守護神・田島慎二が爆発炎上、開幕投手・小笠原慎之介が魔境・神宮球場で火だるまになると、あっという間に再び最下位へ転落してしまった。まさに混セならではのジェットコースター・ベースボール。高低差で耳キーンなるわ。
しかし、まだまだ誰もあきらめちゃいない。ファイティングポーズを崩さない現在のドラゴンズにとって生命線のような存在なのが、プロ5年目、30歳の中継ぎ右腕・祖父江大輔だ。
一度目にしたら忘れられない眼光
ドラゴンズのブルペンは今、大変なことになっている。田島の防御率が4点台なのをはじめとして、開幕から奮闘してきたルーキーの鈴木博志も4点台、超ベテランの岩瀬仁紀は5点台で、かつてのセットアッパー・又吉克樹は9点台というありさま。復活を期したドラ1コンビの岡田俊哉と福谷浩司は2軍で調整中。ドラゴンズの防衛線はもはや崩壊寸前と言っていい。
そんな中、孤軍奮闘しているのが祖父江大輔である。ここまで28試合に登板して、防御率1.21という数字は立派としか言いようがない。最近はリードしている局面で8回の重要な場面を任されるようになった。炎に包まれる戦場で必死に自軍のトーチカを守ろうと戦う祖父江三等兵の姿が目に浮かぶ。
武器は140キロ台のストレートと130キロ台のスライダー。けっして150キロ台のスピードボールをビュンビュン投げこむタイプではない。祖父江の一番の武器は、打者に向かっていく気迫だ。大きく頬を膨らませ、深く息を吐きつつ、眉間にこれでもかとシワを寄せて打者を睨みつける。まさに「目で殺す」。あの鋭すぎる眼光は、一度目にしたら忘れられない。
こうやって気迫を前面に出すタイプの投手がドラゴンズにもっといてもいいと思う。祖父江はこう語る。「これまで野手だった分、後ろで守っていてくれる野手に弱気な姿は見せられないですし、160キロを投げられる投手ではないので、気持ちでカバーしよう、と」。打てるものなら打ってみろ、という気持ちは絶対に忘れない。新人の頃、ソ・ヨンビン2軍コーチ補佐に言われたことを忠実に守っている。
6月22日、23日のDeNA戦では、いずれも僅差のリードの中で8回に登板し、ランナーを背負いながら筒香と宮崎という中軸に立ち向かった。祖父江の投球はいつだってギリギリ目一杯だ。22日のピンチは宮崎の打球をセカンドの周平が横っ飛びで追いついて、なんとか切り抜けた(担った!)。23日は筒香をフルカウントから外角への変化球で空振りの三振、宮崎をセンターフライに仕留めてみせた。三等兵だって、重戦車を仕留めることができるのだ。