5人の中でも特に短いコメントで、感情を読み取ることも難しい。その“あっさり具合”は、引退発表文と共通した印象を受ける。
この会見での立ち位置、話す順番や内容について本人たちの意志がどれほど反映されていたかはもちろんわからない。事務所サイドがそのほとんどを決めていたという話も漏れ伝わってきている。
しかしリーダーでありながら他の誰よりも言葉が少なく、表情も動かさなかった。他のメンバーは口調や声色の変化、視線の動きなどからその感情がある程度読み取れるが、中居氏の「心の動きや感情の揺れのわからなさ」は際立っている。
“公開処刑”の少ない口数の中で、中居氏が言及したのはSMAPに関わる人たち、そしてファンのことだった。
このファンに対する時に感情が出やすい特徴は、引退発表の文面でも同じだ。「中居ヅラ」と呼ばれるファンクラブの会員に向けた「一度でも、会いたかった 会えなかった 会わなきゃだめだった」というコメントは、本人の内面が漏れ出ているように感じさせる。
過剰なほどの饒舌さは、自分の心を守る方法だったのか
中居氏の会見と言えばもう1つ、2020年2月21日に行われた事務所退所についての会見が思い出される。入場からエンターテイナーぶりを発揮し、司会も立てずに自分で会見を仕切り、軽妙な語り口とユーモアで記者たちを笑わせた。
一見すると“公開処刑”会見や引退表明文とは真逆の印象だが、今振り返ると、その饒舌さは、自分の心の内側に踏み込ませないための守りの手段にも思えてくる。
彼の心の内や感情を探ろう、踏み込もうとする記者たちを、過剰なほどに饒舌にしゃべることでうまくかわしていたのではないか。彼にとってしゃべることは、仕事であると同時に自分で空気を掌握することによって心を守る手段だったのだろう。
そしてその方法が使えなくなった時、彼にできるのは「何も語らない」という方法しかなかったのかもしれない。