今では江原ランドを有する地元の人たちは、カジノを誘致したことを後悔して、廃止を目標としているようです。しかしこれがまた難しいのです。撤退させても、壊すのに費用はかかるし、その跡地に何が来てくれるかというと、その可能性もないのです。

 さらにもうひとつ、カジノに伴う負の側面に苦労している国にシンガポールがあります。シンガポールは東京23区と同程度の面積で、そこに550万人が住んでいます。IRが設置されたのは2010年です。カジノは2ヵ所にあり、ひとつはマリーナ・ベイ・サンズで、前述したシェルドン・アデルソン氏の会社が運営しています。もうひとつはセントーサにあります。

 シンガポール政府は、カジノ管理法を制定し、カジノ規制庁を新設したうえに、国家賭博問題対策協議会も設けています。そんなシンガポールでもNPO法人のワン・ホープ・センターによれば、国内にカジノができて、ギャンブルを間近に見ることができるようになり、大きな懸念が生じています。未成年者の飲酒が3倍、喫煙が4倍、危険ドラッグ使用が2倍、非行が3倍、警察による補導が4倍に増加しているのです。さらにマリファナやコカイン、ヘロインなどの麻薬関連事件も増えていると言います。

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政治家たちの甘言にだまされてはいけない

 かつて橋下徹知事は、「汚いものは大阪が全部引き受ける」と豪語しましたが、それは私見であり、市民は誰ひとりそう思っていないはずです。カジノに付随するこのような陰の部分を知れば、すぐにでも異議申し立てをするでしょう。

 安倍首相も「クリーンなカジノにする」とうそぶきましたが、先例に目をつぶった根拠のない発言なのです。

 もうひとつだまされていけないのは、前にも触れたように、IRという用語です。ホテルや国際会議場、劇場、レジャー施設、ショッピングモールなどが付設された統合型リゾートと称しているものの、シンガポールではIR全体の売上額の8割以上がカジノによるものなのです。言うなれば他の施設はおためごかしと言えます。

 大谷翔平選手の元通訳の銀行詐欺事件で明らかにされたのが、スポーツ賭博の違法ブックメーカーがしていたマネーロンダリングでした。

水原一平氏 ©getty

 韓国とシンガポールの例では、この資金洗浄については触れませんでした。マネーロンダリングとは、不法な手段で得た資金を、高級ブランド製品を購入して国外に持ち出したり、銀行に預けたりして、出所を不明にして、合法的な資金に変える方法です。

 これにカジノでのギャンブルが利用されやすいのです。現金をチップに換えるだけで、不正な資金は、正常なギャンブルのチップに様変わりするので、最も簡便な資金洗浄です。あとはカジノで大勝ちをしたといって、新たな現金を入手すれば事足ります。カジノ内をすべてキャッシュレスにすればいいのでしょうが、これでは臨場感が薄れて客足は遠のくでしょう。

 監視がむずかしいので、カジノに資金洗浄はつきものと言えます。収賄のときも、現金をチップに換えてギャンブルをさせ、それで勝った金だとすれば、収賄の足跡は消えるので、政治家には貴重な場所なのです。

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