野党を手玉に取った森山
国民の幹事長の榛葉賀津也は3党合意に署名すると、補正予算案に賛成する方針を表明。不倫で役職停止中の党代表、玉木雄一郎も得意満面だった。
その直後、衆院予算委理事会で与野党が補正予算案の採決に円満合意した。自公が立憲の要求を受け入れ、能登地域の復興経費を1000億円積み増したからだ。立憲は28年ぶりの予算修正を「勝ち取った」(代表の野田佳彦)と胸を張った。石破政権とすれば、国民の賛成方針が変わらないうちに、補正予算案を衆院で通過させたい。そのために立憲への手土産として1000億円を積み増したのだ。
補正予算案の衆院通過から5日後、三党税制調査会長の協議で、自公は改めて国民に123万円への引き上げを提案。178万円に遠く及ばないことに反発した国民は協議を打ち切ったが、時すでに遅し。自民内には「森山さんが野党を手玉に取った」(中堅議員)との声も上がった。
立憲側で森山と非公式に交渉したのは、予算委員長の安住淳だとみる向きが多い。両者は安倍・菅政権時代に自民、立憲の国対委員長を務め、長く気脈を通じているからだ。
キャスチングボートを握っているが故に、高い要求を一切譲らず、財源には責任を持たない国民に、自民では苛立ちが募っていた。立憲にも個人プレーに走る玉木への嫉妬がうずまく。自民、立憲が手を握れば、国民の影響力は一気に低下する。森山と安住は「阿吽の呼吸」で、補正予算案の修正と採決を同時決着させたとの見立てだ。(文中敬称略)
※月刊文藝春秋の名物政治コラム「赤坂太郎」全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」で公開中です。全文では、立憲・小沢一郎と接触する国民・榛葉賀津也の思惑、選択的夫婦別姓の問題を政局に持ち込むか否か、「高市政権にするしかない」発言などについても語られています。

