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楽天ナンバー2の交代

 携帯事業の巨額損失で、一時は経営危機も叫ばれた楽天グループ(三木谷浩史会長兼社長)。ただ、2023年初頭から5万店以上の楽天市場の店舗などを対象に法人向けの契約獲得を進め、契約者数は急増した。グループ全社員が名刺の裏に契約サイトへ誘導するQRコードを印刷。契約獲得時の成功報酬を奮発する「どぶ板営業」の効果もあり、24年7〜9月期は約4年ぶりに全社の営業損益が黒字化した。楽天モバイル(矢澤俊介社長)単体の黒字化も、そう遠くないと言われている。

楽天グループ会長兼社長の三木谷浩史氏。一時は経営危機も叫ばれたが、「どぶ板営業」で4年ぶりの黒字化を達成 ©時事通信社

 そうした中で注目されているのが、ナンバー2の交代人事だ。金融事業を統括する穂坂雅之氏が3月下旬の株主総会で本体の副会長と楽天カードの社長職を退く。穂坂氏はオリックス・クレジット(岡田靖社長)を経て03年に楽天に入り、金融事業を収益柱に育てた立役者だ。三木谷氏より10歳近く年上で「トップに意見を言える数少ない右腕」と評されていた。退任の理由を「もう70歳で年だから」と周囲に漏らしているが、その言葉を額面通りに受け取る人は少ない。楽天カードは24年12月、みずほフィナンシャルグループ(FG、木原正裕社長)から14.99%の出資を受け入れている。

「楽天としては携帯事業への投資資金捻出の意味合いが強い。それゆえ、自分が育てた金融事業がモバイルの食い物にされていることに、納得できなかったのではないか」(楽天関係者)

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楽天グループの本社「楽天クリムゾンハウス」 ©show999/イメージマート

 穂坂氏の退任で、ナンバー2に浮上したのが百野研太郎氏だ。グループ本体の副社長を務め、モバイルも管掌。三木谷氏から「けんちゃん」と呼ばれ、信頼も厚い。百野氏はトヨタ自動車(佐藤恒治社長)出身。三木谷氏とハーバード大学経営大学院で同期だった楽天グループ副社長の武田和徳氏がトヨタ出身で、武田氏の誘いで、07年に楽天入りした。小六から大学まで単身米国で暮らしていた百野氏はどぶ板の楽天カルチャーにも馴染んでいる。

※本記事の全文(約4800字)は「文藝春秋」2025年3月号と「文藝春秋PLUS」に掲載されています(丸の内コンフィデンシャル)。記事全文では下記の内容をお読みいただけます。

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