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隣で「見て覚えろ」からモニターの時代へ
また、ベテラン外科医には若い外科医を育てる役割もあります。かつては手術も、職人さんの徒弟制度のように「見て覚えろ」式だったそうです。長年ベテラン外科医の元にお仕えして、「前立ち」と呼ばれる手術助手の立場になれないと術野(手術をしている体の中の様子)を覗き込むことができなかったので、執刀医になれるまでだいぶ長い時間がかかったと聞いています。
しかし近年はモニターを見ながら手術する腹腔鏡や胸腔鏡の手術が普及したおかげで、手術室にいる全員が術野の様子を見られるようになりました。それによって若手医師の手術の習得が早まったと言われています。ですから今後は、二宮さんのような若い天才外科医が出てくることも、夢ではないかもしれません。
もっとも術後死亡率が低かったのは「50代の女性外科医」
また、腹腔鏡や胸腔鏡の手術は力よりもむしろ繊細な操作が必要なので、外科の現場では女性医師の活躍も期待されるようになっています。冒頭の津川医師の論文でも「50歳代の女性外科医の術後死亡率が6・0%ともっとも低い」という結果だったそうです。医学部に入る女性が増えていますので、多くの人に米倉涼子さんのようなカッコいい外科医をめざしてほしいと思います。
医療ドラマでは派手で花形の外科医ですが、現実には勤務が長くてキツイ仕事が多いので、外科の現場はつねに人手不足にあえいでいます。こうした医療ドラマを見て、外科医に憧れる若い人が増えたなら、多少現実離れしていても社会的意味があると言えるかもしれません。