体当たりのルポは、國友さんの定番になった。その後、五輪でわく東京でホームレスとして暮らした『ルポ路上生活』を発刊。いまは、釜ケ崎と並ぶ日雇い労働者のまち、横浜・寿町に拠点をかまえて連載をしている。

 それでも、西成には年に数回、通い続けている。

「なんか感謝があるんです。ライターとしても社会人としても育ててくれた」

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地元の人たちが集まる「三角公園」の前で思い出を語る國友公司さん。公園の隅でダンベルで筋トレを続ける70代の男性に何度も取材したという

西成に増えるYouTuber、中国人、ベトナム人

 訪れるたび西成は大きく変化している。外国人観光客やユーチューバーが目立つようになり、近くに星野リゾートが進出した。

 24年9月も釜ケ崎に入り、まちを見て回った。18年の滞在中と比べ、カラオケ居酒屋と民泊がさらに勢いを増し、中国人が所有する土地が急増したと感じている。ベトナム人らのコミュニティーも広がった。

 國友さんと並んで細い路地を歩いていると、中年男性が声をかけてきた。「若者にプレゼントがあんねん」。ケースに入ったDVDを見せてくる。「買わないっすよ」と國友さん。男性は「ええねん。おれの使い回しやけどな」と話してはいたが、そのまま離れていった。

「こんな自分も受け入れてくれた」

 國友さんは「あんな独特のやり取りが初めの頃は新鮮で楽しかった。ああいう人って地元で相手にされず、観光客ら外の人との会話を楽しんでいるので、それもまちの奥深さかな」と話した。

 こまごまとしたことにほとほと疲れたとき、このまちに戻りたくなるという。全部投げだし、簡易宿所の給料だけで何とか過ごした日々が懐かしくなる。「受け入れる、変わりゆく、そんな風通しのよさが西成でもあると感じる。こんな自分も受け入れてくれた」

 このまちの底知れない懐の深さにひかれている。

次の記事に続く 「兄貴も含めて周りに心配かけてきた」ダルビッシュ有の“ワルの弟”と呼ばれたダルビッシュ翔(36)が、西成で炊き出しを続ける理由

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