おいおい、それ、俺の思い出じゃねぇーよ!
厳選80枚とも言えるが、自分の意志でない場合も考えられるし、時系列で80枚の記憶が脳裏スクリーンに投写されるとは限らない。たぶん、走馬灯はシャッフルだ。人によってスライドフィルムが替わる速度も違うだろうが、イメージとしては小林克也さんがVJを務める番組『ベストヒットUSA』。そのタイトルバック(レコードのジャケットが次々に流れてくる)に似て、かなりの高速で記憶が浮かんでは消える。
“おいおい、それ、俺の思い出じゃねぇーよ!”
そんなヘマもあるだろうが、文句を言う間もなく終わってしまう。後の祭りとは正しくこのことである。
だから、先に例として出した「あーね」「それな」「知らんけど」を、今更学習してる場合ではない。
それに、自分しか見られないたった一度の上映会だ。現世では当然、R指定が入る記憶も数に入れておきたいところだが、
“あん時のセックスは最高だった!”
なんて記憶はあっても、その時のパートナーの名前が出ないようじゃ、スライドからはじかれる恐れがある。基本、走馬灯制作サイド(先ほど述べたように無自覚の場合)が、リアリティを重要視してくるに違いないからだ。ここは生前の内に抜け落ちた記憶をどうにか甦らすしかない。
その頃の友人知人に久しぶりに会い「あのコの名前、何だっけ?」と、聞いてみるのも手だが、亡くなる寸前にその名を叫んでしまい、遺族を困惑させることも考えられる。
“じゃ、どうする?”
現時点で僕、スライダーが言えることはこれだけだ。
(柳沢慎吾さんの声色で)
「いい走馬灯見ろよ!」