「恋愛で生き直す」思想を信じた団塊世代

 まじめに仕事をし、妻を誠実に愛してきた人生だった、そのことを恥じることはない。だからこそ出会った女性との「恋愛」に、まじめで責任ある態度で臨みたいのだ。妻とは愛しているから結婚したのであり、何度も同僚から女性との遊びに誘われたが妻を裏切ると思うと断るしかなかった。

 定年退職後、やっと妻との時間もとれるようになり、これから長い老後をともに生きていくつもりだった。その道はずっと先まで見通せる気がした。健康でありさえすれば、経済的にも不安はない。

©AFLO

 しかし彼らの中で強烈に蠢く衝動もある。会社のため、妻のために生きてきた人生をリセットしたい、第二の人生を思いどおりに生きたい、体力だって気力だって20代のころと遜色ないような気がする。そんな彼らから発散されるエネルギーが、まるで触手を伸ばすかのように新しい出会いをつくる。求めよ、さらば与えられん、である。

ADVERTISEMENT

 恋愛(異性との出会い)で生き直す、どこかで聞いたセリフである。そう、これぞロマンティック・ラブ・イデオロギー(愛と性と結婚の三位一体説、RLI)の中核になっている思想なのだ。本書では、RLIを信じたのは団塊世代の女性のほうだったと述べてきた。しかし団塊世代の男性の中には、RLIを信じている人たちもいたのだ。

 仕事中心の生活を送って、浮気は男の甲斐性とばかりに遊び、妻や子どもに対して何の関心も払わなかったにもかかわらず、定年退職後は妻のご機嫌をとって老後の生活へのソフトランディングを図る。

 あまりにありふれた姿のどこにもRLIは感じられない。しかしアケミさんの夫のように、妻と誓った愛を全うしようと努め、妻と協力して子育てに関与し、家族中心であろうとした男性もいたのである。

 彼らにおけるこのようなRLIの残滓が、定年退職後の「恋愛」への没入と「生き直し」という言葉につながったと考えられないだろうか。

2024年 読まれた記事「家族部門」結果一覧

1位:「まじめに仕事をし、妻を愛してきた」夫が定年後に“裏切りの不倫”。いったいなぜ…? 不貞行為をした男性の“衝撃的な言い分”
https://bunshun.jp/articles/-/78689

2位:55歳の年上男性と“デートゼロ”で電撃結婚…26歳差の「超年の差婚」をしたタレント・友寄蓮(29)が語る“夫の年齢が気にならなかった”ワケ
https://bunshun.jp/articles/-/78688

3位:“裕福な暮らし”をしていた80代の仲良し夫婦が、福井の火葬場で焼身自殺。いったいなぜ…? 老夫婦が壮絶な心中を図った“悲しすぎる理由”
https://bunshun.jp/articles/-/78687

4位:「訴えるなら訴えろ」「他言しないという誓約書にサインしろ」息子が盗撮に関わったと認めたくない親が、被害女性(17)の親に向けた“驚くべき逆ギレ”
https://bunshun.jp/articles/-/78686

5位:父親の性的虐待を苦に小学6年生女子が自殺? 警察発表は無し、学校は相談を受けていたが…
https://bunshun.jp/articles/-/78685