留学生を殺害後にワイセツ。さらにバラバラにした上、遺体を食べたことで世界中から注目を集めた佐川一政氏(享年73)。いったい彼はどんな人物だったのか? 彼に複数回、取材した報道カメラマンの橋本昇氏の新刊『追想の現場』(鉄人社)のダイジェスト版をお届けする。

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 2022年11月24日、世界を震撼させたパリ人肉事件の犯人、佐川一政が73歳で亡くなった。1981年に起きたこの事件は、佐川が留学先のパリで友人のオランダ人女性を殺害し、その肉を食べるという凄惨な内容だった。事件から約40年、佐川の最後の10年間は謎に包まれていた。

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 事件当時、佐川は「彼女の肉を食べたかったから殺した」と供述し、精神鑑定の結果、心神喪失状態と判断されて不起訴となった。日本に強制送還された後も、佐川は自由の身となり、小説家として活動を始めた。

 事件から約20年後、ある雑誌の取材で佐川は衝撃的な発言をした。

佐川一政氏 ©文藝春秋

「僕は今でも女性を食いたいと思っていますよ。電車なんかで女性のふくらはぎを見ると食いつきたくなるんですよ」

 さらに、佐川は現役女優の名前を挙げ、「食べたい。とても食べたい」と語った。この発言は、彼の中に潜む欲望が未だ消えていないことを示している。

 取材した報道カメラマンの橋本昇は、佐川の語り口について「何の抑揚もなく、感情の起伏も喜怒哀楽も感じさせない、ただ彼の心の中のもやもやしたものが空中に浮遊しているという、まさに”霧の中”だった」と表現している。

 佐川は自身の心の闇について、「僕は1か月に1回、聖マリアンナ医科大に通院しているんです。そこで僕と同じように”人を食べたい”という女性と知り合いましてね。いつか死なない程度にお互いを食い合おうと言ってるんです」と語った。

 この発言からは、佐川が自身の異常性を認識しながらも、それを制御できずにいる様子がうかがえる。

 佐川一政は、事件後も自由の身となり、小説家として活動するなど、世間の注目を集め続けた。しかし、その本質は最後まで霧の中に隠れたままだった。

 彼の死によって、パリ人肉事件の真相はさらに深い闇に包まれることとなった。佐川一政という存在は、人間の持つ最も暗い欲望の具現化として、私たちの記憶に残り続けるだろう。

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