「加害者はみんなヒョロッとした青年」

「たしかに」と、日本社会事業大学名誉教授の古屋龍太さんも言う。

「グループホームの運営が、障害福祉サービスとして儲かるということで、不動産関係など営利目的の人がどんどんこの分野に入り込んできました。たとえば地主にアパートを建てさせて、『障害のある方のお世話をしてもらう仕事です』などと、福祉に疎い人たちがまったく福祉の知識のない人たちに世話人をやらせるようになったわけですね。

 グループホームとは『住まい』に他なりません。しかし、福祉への理念も志もない人たちが、ときに想定外のことをやる。入居者がそれぞれの居室を自分の居場所として暮らしているにもかかわらず、行動に障害のある自閉症の人に『じゃ、朝までゆっくり寝てよ』などと言って、居室の外から鍵をかけてしまうわけです。実際、部屋の外から施錠できるグループホームが作られましたが、グループホームの居室に鍵をかけて閉じ込めるという発想すら一般的になかったので、それに対する規則もありませんでした。

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 障害のことだけでなく、障害者に対する関わり方を知らない人たちが、こういう仕事に入っていくと、ある意味で逸脱は避けられないところもあるんです。優しく接するよう言われても、それができず、何とか服従させようとする。言葉で言っても通じない連中だから、痛い目に遭わせればわかるはずというわけですね。

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 かといって、そういう人たちが異端かと言えばそうではない。みんなごく普通の庶民で、自分が悪いことをやっているという意識もないんです。

 神戸市の神出病院事件(2020年3月に発覚)では、男性患者同士にキスをさせたり、逆さにしたベッドで患者を監禁したりするなどの看護師による虐待がありましたが、多くの関係者が裁判所に行って驚いたのは、『加害者はいかつい男だと思っていたら、みんなヒョロッとした青年だった』ということです。

 どんな人でも初めての世界に入ったときは、先輩からいろいろ教え込まれる。なかでも知的障害者の施設になると、『利用者に甘く見られちゃいけない』というところから入りがちです。『こういうふうにやれば、言うことを聞くんだ』と教えられ続けた人は、どうしてもそのやり方しかできなくなってしまう。つまり、障害者を大人しくさせるのが、支援者の力量だと思い込む。そういった誤った“常識”が、いつのまにか当たり前になっていくんですね。そうした処遇の根底にあるのは、優生的な考え。つまり、彼らを“劣った存在”と見る観念なんだと、私自身は思っています」

次の記事に続く 「患者のリアクションが面白くてやった」「先輩もやってるし、いいかと安易に思った」…障害者施設入所者を暴行した看護師たちの“信じられない言い訳”