5月13日、ウルグアイ元大統領のホセ・ムヒカ氏が89歳で死去した。ムヒカ氏は、大統領公邸に住まず、古びた平屋で妻と暮らし、給与の大半を寄付。“大統領らしくない”質素な暮らしぶりが注目を集めた。
「世界で一番貧しい大統領」と呼ばれた彼は、なぜ生涯を通して清貧生活を貫いたのか。2016年4月に初来日した際には「文藝春秋」の単独インタビューに応じている。(取材・構成 中村竜太郎)
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「大統領も国民のひとりにすぎない」
質素な生活ということで注目されたことについてたずねると、ムヒカ氏は「いやいや」と首を横に振りながら、こう続けた。
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ムヒカ 多くの人は、大統領は豪華な生活をしないといけないと思い込んでいるのでしょう。けれど私はそう思わない。大統領も国民のひとりにすぎない。私は料理もするし皿も洗う。買い出しにも行く。毎朝、犬のマヌエラに餌をあげるのも私の役目。私は独立広場のベンチで、ひとりでマテ茶を飲むが、たくさんの人が話しかけてくる。警備に困るなんていわれても、かまわない。大統領が一握りの金持ちと同じ生活をしていたら、国で何が起こっているかわからなくなる。国民の生活レベルが上がれば、私の生活レベルも上がるだろう。それがいいんだ。人気が欲しくてこんなことを言っているわけではない。何度も考え抜いた末の結論なんだ。