再犯をしていないAは、更生していないとはいえない
たとえば、1979年の三菱銀行人質事件が、それにあたる。
この事件では、大阪市の三菱銀行の支店に猟銃を持った梅川昭美という30歳の男が立てこもり、行員や客を人質にして、人質と警官の計4人を殺害した(発生から42時間後に梅川は射殺される)。
この事件は、じつは再犯だった。梅川は15歳のときに、主婦を殺した強盗殺人で、少年院に収容されていた。だが、わずか1年半で社会に出て、その十数年後に、再び殺人事件を起こした。
もうひとつ、別の例をあげる。
2005年には、大阪市で22歳の山地悠紀夫という男が、見ず知らずの若い姉妹2人を殺す事件があった。この男もまた、16歳のときに実母を殺し、少年院に入っていた。山地は事件から3年後に社会に出ていた(姉妹殺害事件で死刑が確定。2009年に執行された)。
この2人は、いずれもAよりも早期に社会復帰し、なおかつ再び事件をおこしている。この2人の少年については、更生にむけた国の支援そのものが乏しかった、と批判がある。
こうした事情を踏まえると、Aのケースは、国のケアが慎重で手厚かった。そして、最悪の事態は免れている。
つまるところ――。
再犯をしていないAは、更生していないとはいえない。
それが国の大枠の考え方になるのだろう。
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