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“鳴尾浜のゴジラ”陽川尚将が、ついに一軍で花開いた理由

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/07/03
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「ゴジラ」の覚醒を呼んだ要因とは

 今年、口癖のように言う言葉が進化を象徴する。「何とか食らいつけるように」ーー。今季、追い込まれてからの打率は3割を軽々と超えている。今までは、脆さも目立っていたが、不利なカウントでは「コンパクトに」と心がけ、踏み込む左足の上げ幅も臨機応変に小さくする。必死の「食らいつき」が、ゴジラ覚醒を呼んだ。

 6月26日のDeNA戦では7回1死一、三塁の好機で追い込まれながら、エドウィン・エスコバーの155キロ直球を捉え、中堅右に飛び込む決勝3ラン。直前に、一塁へのファウルフライを相手が落球する運も味方に付けた男は、もう無敵だ。ベンチ前では今年2軍で披露してきた胸を叩く“ゴリラポーズ”も披露。翌27日のスポーツニッポン大阪版の1面には「ゴリラ弾」という野性的な見出しが躍った。バナナをこよなく愛する強面の男は「歓声はすごく気持ち良かったです」と照れくさそうに笑った。

「ゴリラ弾」の見出しがついた6月27日のスポーツニッポン大阪版の1面 ©スポーツニッポン

 いかつい面構えは一見、不器用そうに見えるが、マメな一面もある。自宅では自炊もこなし、野菜炒めや、豚の生姜焼きが得意料理。入団直後に、病欠で離脱したことを教訓に体調管理には、気を配り、自宅の冷蔵庫には健康食品の「もずく」が積み重なって常備されている。ちなみに、「食感が本当にダメなんですよ」と唯一、苦手にしているのが「なすび」だという。

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「まだまだ、これからなんでね。結果を出していくだけです」

 このフレーズも、何度聞いたことか。7月1日のヤクルト戦では球団の第100代の4番に座って、1安打2打点。どれだけ打順が上がり、快音を響かせようとも、慢心はない。2軍でくすぶってきた者だからこそ、危機感がはるかに上回る。

 貧打解消の起爆剤として獲得した新外国人のエフレン・ナバーロが、自身の立場を大きく脅かす存在であることも当然、自覚する。とにかく、打って、打って、打ちまくらなければ、活路は開けない。「ゴリラ」に「ゴジラ」……そのスケールの大きさに違わぬ打者を目指して陽川はフルスイングを続ける。

遠藤礼(スポーツニッポン)

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