ナッシュはスタンフォード大学で7時間以上に及ぶ外科手術で顎を接着させた後、オハイオ州のクリーブランド・クリニックで簡素な顔面移植手術を受け、さらに2011年、ボストンのブリガム・アンド・ウィメンズ病院で両手の移植手術、2015年に改めて顔面移植手術を受ける。いずれの手術も成功したが、移植された臓器を体が拒絶するのを防ぐために生涯にわたる投薬を必要とし、可能な限り多くの機能を取り戻すために理学療法とリハビリテーションを受け続けることを余儀なくされる。
一方、ナッシュ家の弁護士は事件から3ヶ月後の2009年5月、サンドラに対して5千万ドル(当時のレートで約40億円)の賠償を求める訴訟を起こし、裁判所は彼女の1千万ドルにも及ぶ資産を凍結する判決を下す。2010年5月、サンドラが大動脈瘤破裂により死亡。2年半後の2012年11月、ナッシュはおよそ400万ドル(約3億6千万円)の賠償金を受け取る。
トラビスの遺体から「抗不安剤」が発見
それにしても、なぜトラビスはあの日、普段から慣れ親しんでいたナッシュに凶行を働いたのか。事件後の検視によりトラビスの遺体から「ザナックス」という薬物が発見されている。
これは、当時、トラビスが患っていたライム病という感染症のためサンドラが飲ませていた抗不安剤なのだが、時に幻覚、攻撃性、激しい怒り、憂鬱などの奇異反応を引き起こす可能性もあるという。この薬が悲劇をもたらしたのか。真相は不明である。
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