1ページ目から読む
2/2ページ目

優しい「お兄ちゃん」が一度だけした兄弟喧嘩

 素顔は家族思いの優しい「お兄ちゃん」だ。3人兄弟の次男。八戸学院光星出身で甲子園に出場と、全く同じ道を歩んできた弟・裕之さんには、使わなくなった野球道具を頻繁に送ってサポートしてきた。「結構、大学のチームメートとかに“兄貴からもらった”って自慢してるらしいんですよね(笑)。そういうの聞くと、笑えますよね」。大学でも野球を続けてきた弟を温かく見守ってきた。

 そんな兄が一度、弟に怒声を浴びせたことがある。「お前、何腐ってんねん! なめてるんか。お前は“俺も頑張ってる”と言うてるけど、それは周りが評価することや。結果を出すことが、どれだけ難しいことか分かってんのか!」。東海大の野球部に所属する裕之さんが、野球に対して後ろ向きな発言を両親の前で繰り返し我慢ならなかった。現在進行形で結果を出すことの難しさを痛感していた兄は、自身にも強く言い聞かせていたのかもしれない。

昨季、兄としての「意地」がつまっていた1試合2本塁打 ©スポーツニッポン

 年明けは毎年、ヤクルト・山田哲人、川端慎吾ら球界屈指の好打者と自主トレをともにし、オフには高校の先輩である巨人・坂本勇人とも会食する。刺激しかない環境に身を置く中で最も意識しているのが、同世代の広島・鈴木誠也。「僕の代には誠也がいるんで。比べられても良いんです。自分がまだまだだと思える」と言葉は一層、力強くなった。

ADVERTISEMENT

 今季、初昇格を果たしたのは5月31日。8打数無安打で一度は降格となったが、6月22日の再昇格後は5試合連続の複数安打をマークするなど打率.333(7月20日時点)と好調をキープし、7月20日のDeNA戦では、横浜スタジアムの左中間スタンドへ実に336日ぶりのアーチとなる今季1号を放った。

「1打席、1打席、無駄にせず、内野で一番になれるように。そうすればチャンスも絶対に増えてくるんで」。6年前の夏、バックスクリーンへ描かれた2本の放物線に乗せた“みんなの夢”は、終わっていない。プロ6年目、北條史也の絶対に負けられない夏が幕を開けた。

遠藤礼(スポーツニッポン)

※「文春野球コラム ペナントレース2018」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイトhttp://bunshun.jp/articles/-/7999でHITボタンを押してください。

HIT!

この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。