米騒動、そもそもの原因は?
山下 おっしゃるとおりです。まず、なぜ令和の米騒動が起きたのか。総括しておく必要がありますね。
そもそも今回の米騒動は、昨年の夏、スーパーなどの小売店の棚からコメがなくなったことに端を発しています。直接の理由は、その前年に収穫した2023年産米が足りていなかったこと。民間在庫は24年5月頃から前年同月比で40万トン減少していました。これが端境期の24年9月には50万トンの減少となり、以降25年2月まで40万トンの減少が続いています。
この23年産米は、登熟期(穂が出てから実が成熟するまでの期間)に猛暑の影響を強く受けたため、乳白粒など被害粒が増え供給が減った。この不足分を補うため、本来なら24年10月から食べはじめる24年産米を8〜9月に先食いした。そのため、24年産米は流通当初から足りなかったのです。
大泉 そもそもほぼ半世紀にわたる減反政策でコメの生産量はギリギリのラインを辿っていました。20年までの10年は平均して年約7万トン削減してきたところを、21年には20万トン、22年には30万トンと、この2年合計で50万トンというハイペースで削減した。23年産米は6万トンの計画でしたが、結果的に10万トンの減産になりました。これだけタイトに削減を進めると、需要が少し回復しただけでもコメ不足になるのは自明の理です。
後ほど詳しく議論することになるでしょうが、政府が本当の意味で減反政策を増産に転換すること、それがこの令和の米騒動を本質的に解決する唯一の施策だと思います。
山下 といっても、すでに25年産米の作付けは終わっていますから、増産の結果を得るには来年の秋まで待たなければなりません。今年10月から流通する新米の値段もこのままでは5キロ4000円以上で推移することになりそうです。今年コメの価格を下げるために供給を増やすなら、輸入の増加しかない。さらに言えば、より確実な米価引き下げの方法は、1キロあたり341円の関税を削減することでしょう。ただ、備蓄米にせよ輸入米にせよ、それは対症療法に過ぎないのです。
大泉 まあ、江藤前大臣に比べれば、備蓄米で足りない場合には輸入米を拡大しようという小泉大臣の柔軟な方針には大いに賛成です。
山下 たしかに。しかし他方で、小泉大臣の発言で気になるのは、ある大手卸業者の営業利益が前年比500%となっていることや、最大で「五次問屋」まで存在することを指摘して、「流通が問題である」と主張していることです。
本記事の全文(約10000字)は、文藝春秋8月号と、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(大泉一貫×山下一仁「小泉農相よ、抵抗勢力は農協だ!」)。
全文では、以下の内容をお読みいただけます。
・ “卸業者悪者論”は本当か
・二毛作はどこに消えた?
・じつは大量の「縁故米」
・菅官房長官の改革も頓挫
・新潟米はロールスロイス
・JAが兼業農家を守る理由
出典元
【文藝春秋 目次】永久保存版 戦後80周年記念大特集 戦後80年の偉大なる変人才人/総力取材 長嶋茂雄33人の証言 原辰徳、森祇晶、青山祐子ほか
2025年8月号
2025年7月9日 発売
1700円(税込)

