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性欲の塊だった麻原

 教団内の風紀の乱れを厳しく指弾する麻原。それでも、「破戒」は続いた。麻原は、「破戒」した信者をさらし者にすることを宣言する。

【大師がね、性的な戒を破った場合、いいですか。大師のタイトルではなく、「戯忘天人」ね、戯れ忘れる天人ですね、というタイトルに変わります。例えば、例をあげるならば、ね、麻原彰晃戯忘天人というタイトルになると。それ略して、天人と。だから、ね、大師がここに名札をつけていて、天人という名前がついてるとしたならば、あ、この人は性欲の戒を破ったんだと】

 ところが、その裏側で、麻原は自らが気に入った少なくとも2人の女性信者と「破戒」していたのだ。麻原は“ダーキニー”と陰で呼んだ愛人たちに、あわせて5人の隠し子を産ませ、愛人の妹と別の女性信者に世話をさせていた。その元信者はNHKの取材に対し「警察の強制捜査の情報が入るたびに、旧上九一色村のオウムの施設から、静岡県内や都内に隠し子を避難させていた」と証言。さらに地下鉄サリン事件の後、10代の女性信者の妊娠が判明したことも明かした。“性欲の塊”なのは、他ならぬ麻原自身だったのである。

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衆院選で全員落選、麻原がもらした不満

オウム教団本部の立ち入り検査で施設に入る係官 ©共同通信社

 ただ、700本のテープの中でも、(3)や(4)に分類されるテープとなると、かなり様相が変わってくる。麻原が社会の破壊をいつから、どのようにして企図したのか、その謎を解明する上で重要な発言ややりとりが含まれているからだ。

 取材班がまず注目したのは1990年の衆院選翌日のテープ。この選挙でオウムは麻原以下25名が「真理党」を名乗って立候補したが、全員落選した。麻原が選挙結果について激しく不満を抱き、社会への敵対を宣言する様子がテープに刻まれている。

【今回の選挙の結果ははっきり言って惨敗。何が惨敗なのかというと、それは社会に負けたと。もっと別の言い方をするのならば国家という物に負けたということに尽きると思います。(略)私は初めは狐につままれたような状態で結果の推移を見ました。そして、それが決定されたあと、私の長女や三女は「お父さんトリックがあったんじゃないの?」と、つまり「選挙管理委員会を含めた大がかりなトリックがあったんじゃないの?」と言った訳です。で君たちも知っているとおり、真理教の基礎票というのは1万数千票(※信者数を指す)はあったはず。ところがこの1万数千票が票になって出てこなかったと。そしてわずか千数百票と。(略)だから考えられることは選管がらみの大きなトリックがあったかもしれないと今考えている。つまり国家に負けたと】

【オウムは反社会・反国家である。なぜならば、今はロッキードでも分かるとおり、リクルートでも分かるとおり、あるいはパチンコ疑惑でも分かるとおり、そういう人たちが社会を牛耳っている世の中である。そして、大企業の主たちも同じように、自己の利益のために働き、そして自己の私腹を肥やし、餓鬼の世界・地獄の世界へと落ちていく。この社会の中にあって、美しく咲く蓮華のように、ドブ川の中で美しく咲く蓮華のようにあり続けるためには、反社会でなければならない。よって、国家・警察・マスコミ、これ全て、これからも敵に回っていくであろう】