文登 当時は「MUKU」というブランド名で、第2弾として洋傘や手帳も販売し始めました。そして2018年、またしても崇弥から電話がきて、「俺、会社辞めようと思って。お前も会社辞めろ! 一緒に会社つくろう!」と。でも私は結婚することが決まっていたので、「いや、無理だよ」と言いました。
楠木 崇弥さんはそれで何と答えたんですか?
崇弥 僕は既に会社に辞めると伝えちゃっていたんです(笑)。自分の意志は固かったこともあり、ひとまずはひとりで動き出しました。
文登 幸い、妻も「あなたのやりたいことをしたら」と言ってくれたので、3カ月後には私も会社を辞めていましたね。
夜行バスで作家を探しに
楠木 小山薫堂さんは同い年で、昔から存じ上げているのですが、起業するにあたってアドバイスなどはもらいましたか?
崇弥 いえ、最初はお会いできなかったです。「いま会いに行ったら、仕事を欲しがっているように思われるな」と考えてしまって。2年半前、「これからさらに会社が大きくなるぞ」という手ごたえを感じたとき、顧問になっていただけませんかとお願いにいきました。
楠木 作品を描いてくれる作家は、どうやって見つけていくわけですか?
崇弥 2人で全国の福祉施設を回りました。お金もなかったので、新幹線に乗ってはいけないルールを決め、夜行バスで移動していました。今回は関西を、四国をと、地域ごとに分けて回っていきました。施設の方や、作家さんにも直接お会いして、「儲けましょう」ではなく、「あなたの作品は素晴らしいから、世に出して障害のイメージを変えましょう」と訴えていきました。
※本記事の全文(約8200字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(松田文登×松田崇弥×星直人×楠木建「障害という異彩を世界ブランドに」)。全文では、下記の内容をお読みいただけます。
・夜行バスで作家を探しに
・双子は意見が通じ合う?
・会議には手話通訳が付く
・投資家の「推し活」の対象に
・アートは世界に広がりやすい
・目下の課題は海外人材
・上場は遅い方がいい?
出典元
【文藝春秋 目次】永久保存版 戦後80周年記念大特集 戦後80年の偉大なる変人才人/総力取材 長嶋茂雄33人の証言 原辰徳、森祇晶、青山祐子ほか
2025年8月号
2025年7月9日 発売
1700円(税込)

